ランボーの書簡より

出版社の販促パンフに引用されていたランボーの手紙の一節が少しよかったのでメモした。

ランボー書簡より(家族あて アデン 1885.1.15)
僕の写真はお送りしません。無駄遣いしないよう気をつけているのです。それに僕はいつも粗末な服を着ています。ここではすごく薄手の木綿の服しか着ていられないのです。この土地で何年かをすごした人は、ヨーロッパで冬はすごせません。たちまち肺炎かなにかにかかってくたばっちまいます。僕が戻るとしても、ですから夏以外は絶対に無理でしょうね。冬になったら地中海まで下っていくより仕方がないんです。いずれにしても、僕の気性が前より放浪気質でなくなるなんて思わないでください。それどころか、働いて金を稼ぐために一つところに留まる必要もなく旅行できるだけのものがありさえすれば、僕の姿は二度と同じところには見られないでしょう。世界はとても広く、素晴らしい国々に満ちていて、千の人生をもってしても尋ねきれないほどなのです。しかし一方では、僕は素寒貧で放浪するというのもいやなのです。つましく暮らして、生活費を払うためにいくつか小さな取引をしながら、一年を二つか三つの違う国ですごせるよう、何千フランかの年金を手に入れたいのです。しかしいつも同じ場所で暮らすとなると、僕にはこれがひどく不幸なことに思えるのです。結局、一番ありそうなことは、行きたくないところへ行き、したくないことをして、一度も望んだこともないような仕方で生きて、死んでゆく、いかなる償いの希望もなく、――ということですね。

「行きたくないところへ行き、したくないことをして、一度も望んだこともないような仕方で生きて、死んでゆく」―いい言葉だと思う。でも、やはり、私が一番人生の本質を感じたのは、『マクベス』だと思う。「行くべきでないところへ行き、するべきでないことをして、信用してくれていた人すべてに捨てられて、死んでいく」とでもいうのかな。あ、私がそうだということではないですよ(笑)