「ブラック・スワン」

飛行機の中の映画。しばらく前から飛行機に乗るたびに観ようと思っていた。主演はナタリー・ポートマンで、この作品でアカデミー主演女優賞をとった。

バレエ『白鳥の湖』の主役に抜擢された若いバレリーナが妄想を発展させていくサイコ・スリラー。彼女のライバルのバレリーナが妄想の中心にいて、最終的には、『白鳥の湖』で光と影になる二人の主役、白鳥と黒鳥の二重性、清楚な聖女と邪悪な性的誘惑者の二重性が妄想の根幹にあることが明らかになる。主人公は、背中から黒い羽根が生えることを恐れて背中を爪でかきむしって自傷し、ついには、白鳥としての踊りにみじめに失敗したあと、ライバルのバレリーナを楽屋で殺し、自分の皮膚を黒鳥の皮膚にかえ、そこから黒い羽根を生やし、赤い金色に輝く目をした怪物になって黒鳥を踊る個所は圧巻だった。結局、ライバルを殺したというのもドッペルゲンガー的な妄想で、それは自分で自分を刺していたのだった。この妄想以外にも、足の指先がつぶれて足先がひとかたまりになってしまうとか、鋭く心に切り込んでくるような妄想がふんだんにちりばめられていた。

あの、バレエに詳しい人にお伺いしたいのですが、この話は、話が始まってすぐに、「ああ、白鳥と黒鳥のドッペルゲンガーだな」とわかるものなんでしょうか? バレエ『白鳥の湖』は何度も観ましたし、その筋くらいはもちろん知っているのですが、話がはじまってから、妄想の基本ラインがわかるのにかなり時間がかかったんです。 (飛行機の中の映画で、英語が聞き取れなかったということもあります。)はじめて気が付いたのが、ナイトクラブの後のシーンで、ライバルのバレリーナの背中に黒い羽根が見えた場面でした。 これは、気が付くのが遅いのかしら?