吸血鬼の精神医学的分析の変遷

Suibhne, Seamus Mac and Brendan D. Kelly, “Vampirism as Mental Illness: Myth, Madness and the Loss of Meaning in Psychiatry”, Social History of Medicine, 24(2011), 445-460.
不思議な素材を用いた論文で、「吸血鬼」の症状が現れた患者がどのように扱われていたかを分析して、20世紀後半の精神医学のあり方の変化を探る論文。Medline で検索してヒットした吸血鬼の論文は、1950年代から60年代には、フロイト派の口唇期サディズムとか、その手のちゃらっぽこの解釈が主流をしめていたが、近年になって、EBM系の妄想や行動の中身や意味を問わない空虚な解釈にとって代わられたという。基本的な議論のラインとしては、とくに新しくはないが、説得力をもつ議論である、でも、やはり、それを吸血鬼で論じるところが、不思議な感じがする。