『資本主義について、彼らが教えない23のこと』

Chang, Ha-Joon, 23 Things They Don’t Tell You about Capitalism (London: Allen Lane, 2010).
しばらく前に書評で見かけて買った書物を読む。とてもいい本だと思う。

現代の世界の経済とその考え方について、私のリテラシーは悲しいほど低いので、時々、雑誌や新聞の書評から面白そうな本を探して読むことにしている。

「経済学は難しい学問で、この中で論じられていることは専門家でも意見が異なる複雑な問題である。それをすべての市民が分かる必要はない。しかし、『行動する経済学的な市民性』(active economic citizenship)を行使するためには、世界の経済のあり方について、的確なことを知っておく必要がある。特に、新自由主義市場原理主義者の経済学者などが言うことの間違いを知り、現実と原理を知っておかなければならない。経済学の95%は常識を複雑にしたものであり、残りの5%も、その原理を説明するのはそれほど難しくない。だから、この本を書いた。」

軽妙な口調でとても楽しく読める。小話も楽しい。一つ、これは日本語になりにくいが、紹介しておく。

医者と建築家と政治家が、世界で一番古い職業は何か、議論していた。医者は、「神が最初にしたのは、アダムの肋骨からイヴを作ること、すなわち手術である。だから、医者が一番古い職業だ」といった。建築家は、「いや、神はその前に、カオスから秩序を作ったではないか。これは建築家の仕事であり、建築家が一番古い職業だ」と言い返した。二人の議論を黙って聞いていた政治家は、にやりと笑って、「いったい、そのカオスは誰が作ったと思っているんだ?」と言った。