19世紀の生と死

Laqueur, Thomas and Lisa Cordy, “Life and Death under the Signs of Thomas Malthus”, in Michael Sappol and Stephen P. Rice eds., A Cultural History of the Human Body in the Age of Empire (Oxford: Berg, 2010), 37-59.
1800年の段階では、生と死は深く結びついていた。それは、宗教と教会によって媒介され、構造化されていた。しかし、1920年には、この結びつきは切り離されていて、両者は世俗化され、行政の権力が扱うものになり、それらを対象とした科学が確立されて、文化と人々の生活に影響を与えるようになった。大きな話としては、世俗化と医学化の枠組みではあるが、その話の中に、どうしても教えたい異質な二つの議論をたくみに組み込んでいる。一つはマルサスの『人口論』―人口において、過剰な生は死を招く―という議論と、その社会思想・政策上の展開の話で、もう一つは、『フランケンシュタイン』―墓場の死体から新しい生を創造した科学者―の話である。これらの二つの話題を組み込んで、それぞれについて医学、文化、思想、政策の話を展開してそれらをクロスさせる手さばきはは、見事としかいうほかない。教科書的な要素を期待されているもので、スリリングな話を展開するときの、私が知る限りでは最高の見本だと思う。この六巻本はあまり出回っていないのかもしれないが、これはぜひ読んだほうがいい。