野口悠紀雄『続・超整理法』

野口悠紀雄『続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法』(東京:中公新書、1995)
超整理法」で有名な元官僚で経済学者の本である。たぶん、オリジナルの『超整理法』と一緒に買ったのだろう。オリジナルは読んだが、理由はよく覚えていないけれども、こちらの続編のほうは読む機会がなくて、大学の研究室の書棚の未読棚に埋もれていたのが、何かのきっかけで現れた。奥付は1997年だから、15年近く前に読みたいと思った本ということになる。

私が『超整理法』と『続・超整理法』を買ったのは、1997年に大学で教え始めてしばらくしたころだったと思う。ほぼ毎日を授業の準備ができない焦り、失敗した授業の敗北感の中で過ごし、それが終わると学会報告の準備が全くできていない絶望がやってくるというサイクルを幾つか過ごした。このままだとだめだという破滅に近い感覚があった。そういう殺伐とした心理状態のときに、新聞か何かで野口の本の広告を見て、この本は、自分の問題の解決法を教えてくれるかもしれないと思った。『超整理法』を読むことは、私の荒れてささくれ立った心を鎮めた。書いてあることを実践したことは一度もないし、実践しようとも思わなかった。私はいまでも野口が批判した横積み法で仕事をしている。

この経験は、いわゆるビジネス書が持っている魅力の根本を私に気づかせてくれたと思う。ビジネス書というのは、回心譚であり、ファンタジー小説であり、奇跡的な治療の物語である。私には、『超整理法』だけで十分で、『続・超整理法』は読みもしなかった。もともと、ビジネス書というのは、買うだけでよくて、読まなくてもいいのかもしれない。