浅田一と男根と張形

浅田一『法医学ノート』(東京:東洋書館、1936)
浅田が終戦直後に出した書物。疎開中で自分が書いたものをすべて散逸してしまったが、旧稿・別刷をまとめたもの。真面目な著作ではなく、大衆向けに猟奇的な犯罪やエロがかった短文をまとめたものである。長崎医科大学のかたわらの「穴弘法」という山には、見事な男根の形をした石が屹立しており、その裏手には洞窟があって、その入口が陰唇のような形をしているから、男根の形をした石とあわせて男女和合の神様ということで、洞窟の奥にある祠に花柳界の女性の参拝が絶えない。あるいは、長崎の老人の犯罪で、もともとは自分がインポテンツだったために愛人にハリガタを用いていたが、その愛人を寝取られてしまって悶々としているときに、隣家の娘が昼寝をしているときにハリガタを挿入したが訴えられて示談となり、そのハリガタは没収されて長崎大学のコレクションに加えたとか、その手の話が多い。(長崎にリサーチに行った時には、浅田コレクションの中にこのハリガタがあるかどうか見てこよう)
 
この手の話をどのように分析できるのかまだ見当もつかないが、20世紀中葉の医学と社会の関係の変化を調べるのに重要な人物であり書籍である。