三宅鉱一とヒステリー論1


三宅鉱一『精神病学提要』増訂第七版(東京:南江堂、1944)
20世紀に入って、ヒステリーというのは疾病そのものとしての地位を失って、ヒステリー状の症状群や、ヒステリー様の反応という形で、あるパターンの症状や反応を名づける言葉となった。その根本にある概念は、ヒステリー性の性格が、外界や自分自身に対してどのように反応するかという、自己の核としての性格を基調にした考え方であった。ヒステリーを論じることは、性格の問題であり、the self の問題であり、その自己が他とどのように関係するのかという、人間と環境、人間と家族・共同体などの大きな問題に設定された。三宅は、ヒステリー性格を、自己顕示性、自己中心性を基調とするもので、一方で暗示性に富むがゆえに、容易に移り変わる気分に支配されて、精神症状や身体症状が次々と現れるのだと考えている。この症状としては、おどろおどろしい幻視を見たり、夢遊病の症状が出たりと、話題性が高い。

このヒステリー性格が激しく、一生続く場合にはヒステリー性変質となり、変質者・精神病質者となる。そこには、性的倒錯、悖徳症、虚言症などの人格障害が含まれ、二重人格、交互人格などとなる。これらの精神病質は、巫女や透視術者などがそうである。三宅『医学的心理学』(東京:南江堂、1939), 390も参照のこと。

画像は、三宅が掲げる、ヒステリー性幻視のときに見られて記録された図。