江戸川乱歩『孤島の鬼』


江戸川乱歩『孤島の鬼』角川ホラー文庫江戸川乱歩ベストセレクション7
『孤島の鬼』は1929年から30年にかけて雑誌『朝日』に連載された小説。主題は「退廃芸術」を体現したかのように、男性同性愛と遺伝性の身体障害という要素を濃厚に含んでいる。主人公の若い男性は狂言回しで、その周りに強烈な個性の人間がそろっている。主人公を同性愛として愛する人物は、大学での若き外科医で、当時のヒロイックな外科手術を体現して、蛙にもう一つ頭をつけるだとかその手の奇形を人造的に作る研究をしている。この外科手術と深くかかわるのが身体障害の問題で、紀伊半島の孤島にすむ「せむし」の人物が犯人であるという設定になっている。そのせむしの人物はその島の大家の主人が、せむしの下女を犯して産ませた子供だが、「不具」を理由に母子とも追放されたため、それを恨み、ついにはその大家を乗っ取って健常者に復讐をするために生きている。その復讐とは、身体障害者を人造的に作成するというどす黒い計画であり、赤ん坊を箱に詰めて小人を作り、顔の皮を剥いで「熊女」を作り、そうやってできた畸形な人間を見世物小屋に売りさばくということになっている。

・・・江戸川乱歩の著作集も、これでやっと読み終わった。なるほど、こんな作品を大正・昭和の人々は読んでいたのか。

画像は、アレクセイ・キャレルが臓器移植を試みていたころの「キャレル博士・モンスターを作る」のカリカチュア。