国際衛生とウィーン会議体制

Harrison, Mark, “Disease, Diplomacy, and International Commerce: The Origins of International Sanitary Regulation in the Nineteenth Century”, Journal of Global History, 1(2006), 197-217.
オクスフォードのウェルカム・ユニットの所長であるマーク・ハリソンによる国際的な検疫をめぐる意見の歴史。詳細なアーカイヴ・リサーチに基づく研究ではなくて、長期のタイムスパンでの鳥瞰的な視点をもつ研究で、16世紀のイタリアの検疫から19世紀末までを一つの論文で扱っている。基本的な視点は、1815年のウィーン会議を、外交全般の分野における転換点とみて、複数の国家による話し合いと合意というモデルが導入されたこと、1851年以降の検疫をめぐる議論は、この新しい外交モデルが、ある領域に特化して展開したものと考えることができること、イギリスはたしかに世界の商業の核であったが、国際的な衛生の議論にはより複雑な国際関係が含まれており、エジプトやロシアなど、ヨーロッパとアジアをつなぐ位置にある国家の外交的な関係が重要な役割を果たしていたことなどが論じられている。