厚生省『昭和29年精神衛生実態調査報告』

厚生省『昭和29年精神衛生実態調査報告』
S34年3月1日に厚生省公衆衛生局長が「序」
精神衛生対策を革新的に進展させるために極めて有意義なものであった。
精神障害者に対する医療および保護の瀬作を推進するのみならず、さらに進んで精神障害者の発生を予防することなどによって国民の精神的健康の保持および向上。 7
専門的な医療を必要とするものは、原則として精神病院において適正な医療と保護を受けさせる方針、このために必要な精神病院の設置、増床、改造などが行われた。しかし一方において、精神衛生に対する関心が深まるにつれて精神病院に入院する者は急速に増加し、病床増加にもかかわらず病床利用率は上昇の一途をたどる状況となった。 さらに施設外にいる精神障害者については、都道府県に精神衛生相談所が設置され精神衛生についての各種の相談に応じ、必要な指導を行い、要すれば専門家に精神障害者の家庭を訪問させて指導を行うような事業、s26年末で、全国の都道府県立精神衛生相談所は33か所であった。
精神障がどの位の頻度で存在または発生するかを調査するに際して、従来用いられたのは、地域的一斉調査と穿刺法と称される方法であった。地域一斉調査は、ある地域内に調査日現在居住している全住民を調査して、その中にいる精神障害者を発見しようとする。穿刺法では。Ruedin によって案出された負荷統計法によって、なるべく偏りのない平均成員に近い構成をもつ集団を調査の発端者として選び、その一定の係累、多くは発端者の同胞の中の精神障害者を調査する。穿刺法では発端者の同胞のうちすでに死亡したものも含まれるため、生まれてから死ぬまでの全生涯の間に精神障害になる者がどのくらいの頻度にいるか (expectancy) などを求めようとするときには、穿刺法による方が適当であり、リューディンの方法が負荷統計法と呼ばれていることからもわかるように、穿刺法は特に精神疾患負因の民族内負荷の程度を推測するためにしばしば注目されている。
最初の報告はCark Brugger がドイツのチューリンゲン地方の116の村について行った調査であり、翌年ババリア地方でも調査をしている。1935年には Erik Stroemgren がデンマークのバルチック海上のボルンホルム島で調査している。アメリカもホプキンズの実験街区で行われた。