戦間期精神病院におけるホルモン治療(イギリス)

Evans, Bonnie and Edgar Jones, “Organ Extracts and the Development of Psychiatry: Hormonal Treatments at the Maudsley Hospital 1923-1938”, Journal of the History of the Behavioral Sciences, 48(3), 251-276 Summer 2012.
20世紀の前半にはホルモン剤を精神病に用いることが盛んに行われた。最も有名なのがインスリンショック療法であるが、他のホルモンも多く用いられた。この論文がもとにしている戦間期のロンドンの先進的な病院のモーズリー病院の症例のデータベースだと、全患者(外来と入院)の5-10%に内臓から析出したホルモンが与えられた。ホルモン療法を受けたのは女性が多く、7割程度が女性である。与えられたホルモンでいうと、最も多かったのは甲状腺で、対象はほとんど女性であった。ホルモンと神経化学はいずれも生理学で最先端の研究であったし、モーズリーで人気があった精神分析も、性の問題を神経症の中心においていた。ホルモン療法は精神分析と組み合わせてモーズリーで人気があった治療法の一つであった。若い女性、更年期の女性、男性などに、精神分析の理論と内分泌学の理論を組み合わせた治療が行われた。

性の問題を枠組みにした治療が、精神分析、神経、ホルモンと異なった枠組みで存在したこと。それらは、この時期においては、組み合わされて用いられていたこと。

私が見ている精神病院でも、ホルモン剤が多く与えられている女性患者がいた。彼女は月経の不順があったので、そちらに向けての治療かと思ったが、そうか、それは切り離された問題ではなかったのかもしれない。