金川英雄・堀みゆき『精神病院の社会史』(東京:青弓社、2009)
金川英雄は、今年の精神医学史観連のベストセラーになった呉秀三『私宅監置』の現代語訳を出した精神科医・歴史研究者である。彼が、精神科の看護士で歴史研究者の堀みゆきと組んで、東京周辺の精神病院の発展を描いた書物である。4章に分かれ、高尾山周辺を集中的に描いた章、東京の私立精神病院群の設立を2群にわけ、明治大正期に作られた本郷・巣鴨周辺の病院と、昭和期に西部の郊外に設立されたものを論じた章、陸軍の衛戌病院に付設された精神病室を論じた章、最後が日蓮宗の宗教治療から発展した慈雲堂病院を論じた章である。高尾山の滝治療についての章が、色々な史料を用いた最も優れた章であり、その他の章も有用な情報が詰まっている。プロの研究者はとりあえず持っておかなければならない書物である。