ドイツの精神病実地調査

Dilling, H., and S. Weyer “Prevalence of Mental Disorders in the Small-Town – Rural Region of Traunstein (Upper Bavaria)”, Acta Psychiatr. Scand. 1984: 69; 60-79.

1975年に当時の西ドイツでは精神保健についての報告が出されて、政策と人々が精神医療の全体像について持つ興味が高まった。しかし、西ドイツでは戦後は精神疾患の疫学研究はほとんど行われてこなかった。唯一の西ドイツでの先行研究は、1930年代にブルッガーが行ったものである。ブルッガーはテューリンゲン ‘Thueringen’ の地域の住民を対象に精神疾病の遺伝調査を行い、1931年から37年にその成果を出版した。面白いことに、西ドイツではそれ以降は精神疫学の調査はされておらず、この論文、すなわり1975年から79年に調査を実施して1984年に英語で出版されたものが、ブルッガー以来はじめての研究であるという。ドイツでは戦間期優生学時代の精神病調査から半世紀ほど精神病調査がなかったのに対し、日本ではほぼ同時期から連続的に精神超調査が行われていたこと。この違いを念頭におくこと。