『アルバート氏の人生』


映画『アルバート氏の人生』を観る。19世紀のダブリンを舞台にして、女性でありながら15歳の時に男性に集団レイプされて以来、男性としてホテルのウェイターを続けてきたアルバート・ノッブスが中年になって人生の転機を迎え、さまざまな悲喜劇が起きるありさまを描いた作品である。グレン・クローズは、私が好きな大女優の一人で、『危険な関係』『ハムレット』以来、久しぶりにスクリーンで観たけれども、やっぱり最高だったと思う。

物語は、フェミニズムと階級社会の二つの話が折り重なりながら進んでいく。私生児に生まれて下層階級に入るが、男になりすましてホテルのウェイターになり、それから金をこつこつと貯めてリスペクタブルな上昇を目指してしているいじましい人物がアルバートである。この周囲にも、ヴィクトリア時代の下層階級が暮らす生活の厳しさと社会格差と性の構造がもたらした閉塞が、さまざまなキャラクターを通じて描かれている。アルバートと同じように女性であることを隠して男性として生きていて、別の女性と「結婚」している人物が登場するが、彼女もとても印象深いキャラクターである。『アリス』や『ジェイン・エア』の主役に抜擢されたた新星、ミア・ワシコウスカがアルバートと同じホテルで仕事をする可愛いメイドの役で登場して、貧困から抜け出したい一方で、ロマンスとセックスが好きな若い女性を演じているのだけれども、あまり心に響かなかった。もともと、顔のつくり自体で言えば決して美人ではなくて、映画の大スクリーンでアップになると魅力的に見えないというネガティブなことが気になってしまった(涙)