ゾンビと世界征服と世界戦争

マックス・ブルックス『ワールド・ウォー・ゼット』文春文庫、上・下、浜野アキオ訳(東京:文芸春秋、2013)

ゾンビによる世界征服と、生き残った人間との闘いを描いた近未来小説。小説と言ったが、登場人物が活躍するストーリーがあるという意味での小説ではなく、「ワールド・ウォー」に様々な形でかかわった人々のインタビューが次々と提示されていく。インタビューは合計で50以上はあって、登場人物も違うし、世界征服と世界戦争の話だから、世界の各地が舞台になっているので、相互の連関は小さい。そのようなインタビューをだいたい時系列の順番に並べて、世界征服と世界戦争の様子を描こうという試みである。この形式のメリットは、世界の色々な地域の様子を描きこむことができること、そしてさまざまな形で事件にかかわった多様な人々を自在に登場させることができる。だから、アメリカの空軍パイロット、ブラジルの医者、カナダでゾンビから逃れた家族、シベリアの兵士、日本のオタクなど、作者が書きたいと思う人物とエピソードを登場させ、相互の連関は考えなくていい自由さがある。デメリットとしては、正直言って、私は面白いとは思わなかった(笑)