私が保管している精神病院の症例誌を用いて、飯島由貴さんが現代アートを作成し、東京と名古屋で展示している。名古屋で展示された愛知県美術館の学芸員の中村史子さんにお話しを伺いに行き、中村さんのお仕事をいくつか頂いたので、メモ。
中村,史子「見えない/見せない記憶の表現 : クリスチャン・ボルタンスキーをめぐって (特集 記憶と忘却)」2013、17、150-167、西洋美術研究
ボルタンスキーはフランスのコンテンポラリー・アーティスト。ユダヤ系のフランス人を父親に持ち、父親はフランスがナチス・ドイツの支配下にあった第二次大戦中には家の床下に隠れていたという「おとぎ話じみた神話」をボルタンスキーはする著名な作品は「モニュメント・シリーズ」と呼ばれる一連のインスタレーション作品で、子供たちのぼやけた古い写真が主な素材として用いられる。この写真は、ボルタンスキーが撮影した写真作品とは限らず、雑誌から切り取った写真や、どこからかもらい受けた写真も少なくない。その大半は凡庸でありふれたものであり、特別な芸術的な意図、高い技術をもって撮影・プリントされたものではない。これらをトリミングして時に大きく引き伸ばし、裸電球とともに壁にかかげる。このように作られた展覧会は、展覧会という公共の場を、全く異なる性質の場にしてしまう。それは、祭儀の場、神秘主義的な祈りの場、もしくは歴史資料の眠る保管庫になる。美術館のホワイトキューブがたたえるドライで清潔な客観性が失われ、代わりに情動的で感傷的な空間に人々がひきずりこまれる。
Onishi Yasuaki: reverse of volume
大西康明「体積の裏側」2011年2月15日(火)-4月17日(日)
愛知県美術館 展示室6
伊東宣明「アート」2015年2月3日(火)-4月5日(日)
愛知県美術館 展示室6ほか