ソ連のTV上の集団催眠について

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旧ソ連末期の集団催眠療法について。1989年の10月に、ソ連のTVで奇妙なプログラムが連続して放映された。アナトリ・カンピロフスキーなる心理療法士が、TVで行った、ソ連の市民に向けられたセアンスだった。カンピロフスキーがTVに現れて、心を無にして、野心や目的をすべて忘れ、目を閉じて心を自由にするように、手には水がはいった盃をもち、自分が送るバイブレーションを受け取るように静かに語り掛けるものであった。カンピロフスキーはもともと臨床心理学者で、著明になったのは、ソ連の重量挙げチームの診療的な指導で好成績を上げてからだった。

1988年から集団心理療法などを行っていたが、1989年のこの時期には、ソ連の体制の崩壊に対応するため、ソ連の市民を落ち着かせるプログラムであったと考えられる。この時期、東欧は激動し、ベルリンの壁が崩壊して、ソ連の影響が崩壊していた。ソ連共産主義が指導する合理的な世界が破滅しつつあった。それに対して、ソ連の市民を暴動や自棄的な行動をさせないための、集団的な心理療法であったと考えられる。旧ロシア、ソ連、現在のロシアと、オカルトと神秘主義の伝統が強い。ことに、旧ソ連は、唯物論の哲学を奉じながら、神秘主義の影響があちこちに見られるという。カンピロフスキーの集団催眠は、その20世紀末の一つの現れらしい。