新療法が全く効かない事に関する論文(昭和7年)

医学論文を読むと、新療法が出てきてうちの研究室でもやってきたらこうだったという追試の論文をよく読む。すごく効くとか、まあまあだとか、そんな感じの論文を数限りなく読んできた。今回、生まれて初めて、新療法がまったく効かなかったという論文を読んだ。良好な成績だったのは十例のうち一例もなかったという。現地で何があったか知らないけれども、少し気持ちが改まった(笑)

 

下村, 八五郎. "「チフス」保菌者ノ「テトラグノスト」治療後ノ排菌状態ニ就テ." 日本伝染病学会雑誌 6, no. 5 (1932): 501-09.

これは九大内科の小野寺が開発した保菌者のチフスを治す療法である。これは従来のあらゆる方法よりも優れたものだとされ、小野寺が実際に台湾にきて、台北市伝染病院稲江医院でも、小野寺に教えられたものが実際に行い、昨年秋には小野寺が自ら来てそれを実際におこなった。そして、保菌者の監視を命じられたので、その10名に関して実績を紹介したい。

その結果は、以下のようである。「新しき保菌者も古き保菌者も、年中いかなる時期に行った治療も、男女に関せず、年齢によらず、内地人と台湾人、チフス経過の有無、腸チフス、パラチフスAB、チフスの菌型の如何を問わず、良好な成績を示したものは一例もなかりき。」

 

ついでにその一覧表を掲げておく。

 

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