静岡市の市立美術館で「いつだって猫展」の展示が始まった。名古屋、愛媛、京都でも開催された展示である。実佳が招待され、一緒に面白い展示を楽しんだ。江戸時代と明治初期のアートにおいて、ネコが面白可笑しく用いられた有様を分析し展示したものである。プロの学芸員が分析と説明をしたカタログも素晴らしい。
医学史に関係があることは二つ。一つは富山の売薬が対ネズミ薬品を売りそのための版画を作っていたことの確認。ネズミは養蚕産業に打撃を与えて、人々は殺鼠剤を買い、その脈絡でネコが宣伝版画に描かれていることなのだろうか。
もう一つは、これはやや大きな話で、「丸〆猫」や「招き猫」と呼ばれている、ネコの人形のお守りの起源の話である。この猫人形は1852年に始まったものであるが、その由来についてはいくつかの説がもともとあった。いずれも、浅草に住む者の飼い猫が夢枕に現れたこと、その人形を売る場所は浅草寺であることという共通点を持っている。浅草寺で丸〆猫の人形を売っているありさまは、歌川広重の「浄るり町繁茂の図」で、猫の人形が売られているありさまが描かれている。そしてカタログで取り上げられているのは『藤岡屋日記』に現れる説で、そこでは丸〆猫の起源は、脚気に対するお守りという由来であるという。カタログは、この藤岡屋日記の話をマンガ家の「くるねこ大和」さんに頼んで、マンガで表現している。これは海原亮さんの論文で展開されている、薬を売る江戸の部分が寺に関係する街の一角である話と関係があるのだろうか。
楽しい展示で絵葉書も何枚か買った。楽しい絵葉書がいっぱいですよ。ぜひ静岡までおいでのほどを。新幹線の駅から歩いて3分くらいしかかからない、街の真ん中の美術館ですよ。