広島と長崎の原爆被爆者の医療的な側面について

https://forgedbyfiresite.wordpress.com/2018/05/08/learning-from-the-a-bomb-atomic-flash-burns-in-hiroshima-and-nagasaki/

イギリスのバーミンガム大学のジョナサン・ライナーツ先生が3か月ほど広島と長崎に滞在され、原爆の被爆者の被害研究をされました。その研究成果の一部を公開されております。

非常に面白い視点が示されております。広島や長崎の被害は、その後の世界にとっては冷戦の中で核兵器による大都市攻撃にどのように対応するかを教えてくれる素材になりました。原爆の爆発の中心で30万度、地表では3,000-4,000度、どのような被害がどの範囲で広がるかという知識は、冷戦下の核決戦に対応した医療対策の設計に利用されたとのこと。また、核兵器の爆発直後だけでなく、長期性を持つ被害者についても、着目しています。どのような医療を医師が行ったのかということも面白い主題ですが、それがなくなったり、あるいは無意味だったときには、ある意味での民俗療法が出てきます。調理油、ジャガイモ、キュウリ、トマトの果汁、ドクダミ、お茶などが用いられたとのこと。ドクダミを用いられた患者のことも丁寧に描かれています。

私は被爆者ではありませんが、ジャガイモ、キュウリ、トマトの果汁、ドクダミというような民俗療法について書くと、ああ、そういえば・・・というような記憶の残骸があるような気がします。漠然とした生活感の中に入っていたと言ってもいいのかもしれない。昭和12年滝野川健康調査の時も、このような療法をある意味で期待していたのですが、そこから薬に一歩近づいたOTC (Over the Counter) の薬の方がはるかに頻繁に使われている。薬ではなくてドクダミのお茶をさがして入れることが、原爆による破壊の意味があったのかもしれないです。

 

ライナーツ先生のグループの広島・長崎の研究はバーミンガム大学の医学史コースでも教えられているとのこと。ご興味がある方は、広島や長崎のアーカイブズにご連絡するか、あるいはバーミンガムのライナーツ先生にお問い合わせくださいませ。

http://seeds.office.hiroshima-u.ac.jp/profile/ja.2629d5465596c399520e17560c007669.html
http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/dscr/staff/
https://www.birmingham.ac.uk/staff/profiles/applied-health/reinarz-jonathan.aspx