歌舞伎座の会員誌の『ほうおう』7月号を読んでいたら、好奇心が高まる公演の情報。7月の歌舞伎座は市川海老蔵が昼も夜も宙乗りで主役を演じるものである。昼は太閤もので、夜は源氏物語である。歌舞伎座で源氏物語を劇化することは、太平洋戦争の敗戦まで禁止されていた。もともとこれは天皇家にまつわる物語で、光源氏が父桐壷帝の寵妃である藤壺と契り、生まれた子が後に冷泉天皇となるという設定が不敬であると判断されたからである。歌舞伎座の最初の源氏物語は昭和26年の3月、源氏物語の最初の部分で、非常に豪華な配役で公演は連日大入りだったという。それから7か月後の10月には須磨と明石の部分をたして再演したという。
今回の市川海老蔵の源氏物語は、オペラの歌声と西洋音楽で光源氏の心情を表現しているという。つまり源氏物語のオペラなのだろうか。たしかに、歌舞伎座でイタリアのオペラのアリアを聞いてみたくなったというのは事実である。Nessun dorma とか歌舞伎座にもう完璧に合うだろうと思う。けれども、それで光源氏を楽しむというのは、不思議このうえない。しかもそれは不敬作品として戦前は劇作が禁止されていたものであるとのこと。何の話なのか、私にはまったく分からなくなっている(笑)