ラエネックの聴診器の授業

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Laennec, René Théophile Hyacinthe. 聽診法原理および肺結核論. 柴田進訳・解説. 創元社, 1950.
 
ラエネックの聴診器に関する大学院の授業。毎年苦労しながら手ごたえを感じているという不思議な授業である。今年は色々考えることがあって1950年の日本語訳を使ってみた。日本語訳も、X線が現れて用いられるようになり、ラエネックの聴診がすでに用いられなった状態での翻訳と解説で、新しい面白さがある。また、ラエネックのテキストを読んでもいろいろと趣きが深い発言がある。今年の面白い点は二つ。一つは、患者の体内から聞き取ることができた音を、どうやって同じものだと理解できるのかという学生の問題提起に対して、日本野鳥の会の聞き分けの原理を説明できたことである。さまざまな鳥の声は、似ているものがあっても、それらは違う鳴き方をするし、会員でその違いを共有できるという説明の仕方を思いついた。授業中にハシブトガラスハシボソガラスの聞き分けの実例を出してみたけれども、この例は違いすぎてあまりよくない。シジュウカラとコガラやヤマガラなどがいい。その実例は自分で作っておこう。
 
もう一つ、学生からのすぐれた提示は、大学院生で医師である三原さんが実際に聴診器を持ってきて、使い方などを教えてくれたことである。これは授業の水準をとても高くしてくれたし、その現実が分かってからラエネックを習うというのは大学院の医学史のある側面にとっては必須の内容である。また、三原さんは、二種類の断続性ラ音(ラッセル音)を聞き分けて区別するサイトを紹介してくれた。一番上のサイトをみていただきたい。これも、シジュウカラとコガラやヤマガラの聞き分けの例ととてもよく似ている。医師が医学史の教育に参加することの大きなメリットである。三原さん、ありがとうございます!