スペイン風邪の100周年記念の舞踏パフォーマンス

 
スペイン風邪の100周年記念の舞踏パフォーマンス。大英博物館で行われ、おそらく1918年の10月くらいのピークを記念したものになるのだろう。エゴン・シーレスペイン風邪で死亡したことにインパクトを得た作品なのだろうか。
 
スペイン風邪はとても面白い。色々な意味で医学史が新しい形をとって発展している主題なので、私もきちんと勉強しなければならない。標準的なことだけを書くと、1918年から1920年まで世界各地で流行した、H1N1 という特定の型のウィルスのパンデミックである。全世界で5千万人から1億人が死亡したと推計されている。イギリスでは死者は20万人を超え、パターンは3回にわけられる。1918年の7月という小さな第一回、10月から12月末という大きな第二回、そして1919年の2月から4月という比較的大きな第三回から形成される。日本は死者推計がかつての統計では38万人で、速水先生によれば45万人である。この計算は、歴史学者からみると原理的にものすごく難しい。こちらも3回にわけている。1918年の10月から1919年の5月までが第1回の最大の流行、そして1919年の12月から1920年の5月までが、かなり大きかった第2回の流行である。1920年の末から1921年までがごく小さな第3回の流行である。これはグラフにはとっていない。
このような公衆衛生的な研究と社会科学系の研究に合わせて、日本では岡田晴恵先生が『強毒性新型インフルエンザの脅威』で与謝野晶子宮尾登美子『櫂』を取材した分析をされている。まだ原作を読んでいないが、岡田先生による宮尾登美子『櫂』で、村人の生活の末端に与えた新型インフルエンザの分析は素晴らしい。今調べたら 宮尾『櫂』はKindle で無料で提供されているので、さっそく買っておいた。日本でも Kindle が本格的な力を出し始めたのかという印象も持っている。
 

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岡田, 晴恵 et al. 強毒性新型インフルエンザの脅威. 増補新版 edition, 藤原書店, 2009.