剽窃研究のディシプリン(笑)

日本の評論家が外国の学者の著作を剽窃していたということが話題になっている。色々と仰る皆様がいるだろう。私も一つ言っておきたいことがある。どちらかというと楽しい話です(笑)

ドイツには剽窃研究を専門にしている学者がいる。メディア学か情報学の学部の先生である。数年前に、彼女からメールがきて、私が編集委員だった雑誌に剽窃出版があるという。書評で剽窃をするというのは、もちろん理論的には可能だが、何が起きたのだろうと不思議に思っていて状況を確認すると、なるほどこれが起きたのか、そしてそれを剽窃ということが確かに必要なんだという、不思議な納得があった。

まったく同じ書評を二つの号に続けて出してしまったのである。書評編集委員長の前任者との連絡のある部分がうまく行かなくて、一つの書評が、彼が委員長だった号と私が編集長だった号に、連続して掲載されてしまった。似ているとか類似しているとかそういう問題ではなく、全文がまったくの合同であった(笑)これを「剽窃」というのかと思ったが、「これは剽窃の理念型である」という剽窃学者の論述も素晴らしく、それに関して書評者を責めるわけにもいかず、編集長の責任というわけにもいかず、まあ、やはり、私の責任となり、誌上で書評上のダブりを謝罪するという事件がありました。

それ以来、私も、これが剽窃の理念型であるということを頭において現実の世界を見るようになりました。この経験、よかったですよ(笑)