身分制と製薬士と薬剤師

吉岡信. 近世日本薬業史研究. 薬事日報社, 1989.

これも非常に優れた書物である。日本の薬をサプライする薬業者たちを、自然科学と身分制の二つの概念で考えて、江戸時代から明治時代への断絶と連続をきちんと論じている素晴らしい議論である。

議論としては、江戸時代には武士と商人がいて、武士は養生の理論などを持つ知識人で、商人たちは薬を売るあきんどか「きぐすりや」であった。明治維新が来て西洋の科学に基づいた薬物学が導入されると、武士たちは士族となって東大に入って薬物学を学び、それを通じて朱子学のように国や君のために尽くす。あきんどたちは商人層で私立の薬学校に行って科学はテキトーに学び、しかし卒業して自分が引き継ぐ薬屋はきちんと経営することができるようにする。このような二重性を持つ断絶と連続が達成されるという議論である。

この素晴らしい基本的な議論はもっと早くマスターしておくべきだった。吉岡先生の他の本も読み、細かい内容もきちんと把握しておこう。