日本の社史の歴史

Donzé, Pierre-Yves and Andrew Smith. "Varieties of Capitalism and the Corporate Use of History: The  Japanese Experience." Management & Organizational History, vol. 13, no. 3, 2018, pp. 236-257. 
doi:10.1080/17449359.2018.1547648.
 
ドンゼ先生が日本の「社史」を取り上げた面白い議論である。ヨーロッパの企業が、それぞれのレトリカルな歴史を書いてきたという指摘がされてきた。それなら、日本の社史はどうなるのだろうかという疑問から出発した論文である。日本の社史というのは、とてもたくさんあり、その中には色々と不思議な魅力がある。その中に、外国よりも社史が多いという特徴もあるとのこと。各国の社史の数を調べるというのは難しいらしいが、2010年代の日本とカナダを較べると、日本はカナダの2.5倍くらいの社史/人口を生産しているという。社史好きなのである。ただ、2010年代と較べるというのは、日本の社史の黄金時代が去ったあとで、実は1990年代、2000年代と、社史の数が減少しているという。かつての終身雇用型の会社が減少し、アメリカ型になったからかもしれない。
 

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ドンゼ先生らの論文より。年代ごとに刊行された社史の数。