アメリカの政権交代とAIDS対策の変化

Padamsee, Tasleem J. "Fighting an Epidemic in Political Context: Thirty-Five Years of Hiv/Aids Policy Making  in the United States." Social History of Medicine, 2018, pp. hky108-hky108, doi:10.1093/shm/hky108.
 
来週の History II では HIV/AIDS の講義で、今回は1980年代から90年代にかけてのアメリカと日本がいかに異なっているかという話をする。その準備の一つにこの論文を眺めておいた。素晴らしい論文で、何かの折にもう一度読み直して使うかもしれない。最初にHIV/AIDSがアメリカで流行を始めたとき、大統領はロナルド・レーガンであり、彼の保守的な態度は、ゲイの解放の中での自由な性的な交渉を唱える革新的な人々と対比をしていた。保守的な行政と闘いながら、革新的なゲイの社会的な確立が達成されていく過程である。少なくとも私はそう教えている。この部分は医学史の常識である。
 
問題は、それ以降にどのようなことが行政と HIV/AIDS の間に起きたのかということが知られていないということである。その問題について、1989年から4年間のブッシュ父、1993年から8年間のビル・クリントン、2001年から8年間のブッシュ子、そして2009年から8年間のオバマという流れの中に組み込んでいく。ここでは、共和党民主党が交互に現れているという面白いパターンがあり、そして HIV/AIDS のアメリカ国内と国際関係の双方での現れ方が変化している。人種の問題が非常に重要になり、アメリカのHIV/AIDS の患者は、白人ゲイであるというよりも、アフリカ系かヒスパニア系男性のゲイになっている。あるいは、宗教の問題、国際関係の問題も重要な話題になっている。
 

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CDC からの2017年のグラフ。新規患者を人種と同性愛か異性愛で分けた一覧表