海軍とGHQと日吉の福沢諭吉

AUKEMA, Justin "Cultures of (Dis)Remembrance and the Effects of Discourse at the Hiyoshidai Tunnels."  Japan Review, vol. 32, 2019, pp. 127-150.
 
慶應の日吉キャンパスは、当初は慶應が所有していたが、第二次大戦の前後に、まずは海軍が所有して本部を置いて大きな地下塹壕を作り、敗戦後にはアメリカが所有するようになった。面白いのは、これに応じて慶應側が福沢諭吉の位置づけを大きく変えているということである。戦前は「愛国者としての福沢」 Fukuzawa as patriot と呼んでいる。戦後になって、アメリカが接収した時期には、福沢は近代的でリベラルな姿となり、Fukuzawa as modern liberal と呼ばれるようになった。
 
面白いのは、GHQによる接収をやめ、戦中に海軍が造った巨大な地下壕をどう解釈するかという問題が現れた時期である。人間の記憶ではなく、物事が引き起こす記憶の時期である。学者が、この問題について、素晴らしい書物を書いてほしいですね。