からゆきさんと狂気の唄

倉橋, 正直. からゆきさんの唄. 共栄書房, 1990.

「からゆきさん」と呼ばれる日本の売春婦がいる。出身は主として九州で、長崎県島原半島熊本県天草諸島などが多い。中国や東南アジアが中心で、ロシア(ソ連)やアメリカにも出張した。もともと貧しい背景で、過酷な労働条件にわが身をさらしており、悲惨な状態があまりにも多い。九州大学のカルテの古いものがあれば、梅毒などで診察されることがあるのかもしれない。

その中で、大連にわたった石井ナミという女性がいる。出身は博多で、悪漢に騙されて大連で酌婦となった。石井は病を得て、国元では母親が病気になり、石井は悪化するが、楼主は仮病だといって折檻を行っている。そこで「満州婦人救済会」に救われ、大連慈善病院に入院した。そこで、もと売春婦であった彼女が、悲愴な唄をうたっている。

窓を引き明け眺むれば
モーシ、モーシ、お月さん
内地にござる母(かか)さんは
無事か知らして下さんせ

このような狂乱した患者が唄を歌い続けていること。このパターンが福岡日日新聞の1906年9月12日に掲載されているとのこと。ちなみに、山室軍平という人物も同じ記事を残している。