池波正太郎とSMと万引き中毒症

松竹の歌舞伎の会の月報の『ほうおう』。11月号を読んでいたら、1977年に初めて書かれて初演された歌舞伎の作品が、江戸時代に起きた現象としてサディズムマゾヒズム、そして万引きに依存し続ける人格を論じているという面白い記事があったのでメモ。著者は池波正太郎で、後には時代小説家として有名になった。鬼平犯科帳(おにへいはんかちょう)などは、タイトルは聴いたことがあるし、非常に有名であることも知っているが、残念ながら一度も読んだことがない。池波のエッセイの中では『アンソロジー そば』の冒頭の作品しか読んだことはない。この作品は、理屈とか議論とか実証とか、そんなことは一切無関係にして、東京のそばの魅力を語る短編である。
 
その池波が『市松小僧の女』という歌舞伎作品を描き、1977年に歌舞伎座で上演された。彼自身が演出をして、人間味にあふれる作品であるとのこと。それと、どのように両立するのかよく分からないけれども、『市松小僧の女』では、江戸時代の男と女がサディズムマゾヒズムと万引き依存症に溺れるありさまが描かれているように見える。ちょっと興味を持って調べたら、池波の初期の作品には「檻の中」という短編の戯曲もあるとのこと。これも読んでおこう。