『病草紙』という史料

須屋, 誠., et al. (2017). 病草紙, 中央公論美術出版.
                
『病草紙』という絵巻物がある。これは「地獄草紙」や「餓鬼草子」などと一連の六道絵巻の一つであり、12世紀の後白河院の周辺で成立した。もとは17場面、その連れと考えられるダンカンをあわせた21場面が現存しており、京都国立博物館九州国立博物館などで分蔵されている。
 
21の病気のうち、歯痛や腹痛などの一般的な症状に加え、急性の疾患と慢性の疾患が含まれている。前者の中には「かく乱の女」があり、後者では「鼻黒の父子」「白子」などがそうだろう。精神疾患も数多く、神経疾患や不安症や幻覚などもある。また、非常に多くの障害が含まれていることが興味深い。頭の上がらない乞食法師、侏儒、肥満の女などがそうである。その他の参考図版も非常に重要である。コメントもとても水準が高い。ものすごく高価であるが、必須の図版である。