今日の医療英会話で難しいのが「うつ」。外因性、仮面、産後、初老期、躁鬱、大鬱、退行期、反応性、引っ越し、不安、老年期、などのさまざまな形容詞がつく。実際につく形容詞はこれよりもさらに多い。
もう一つ「うっぷん」という語が難しかった。新明解だとかなりわかる。「長い期間抑えてきて、我慢しきれなくなった怒り」である。ところが、この怒りを英語にすると pent-up という英語であることがよく分からなかった。英語で pent-up というと、私たちにとっては「部屋に人がたくさんいて、院内感染が起きる」という感じの意味である。OEDだとこのような感じである。
1803 Med. & Physical Jrnl. 9 187 The pent up bed-house, the clothes of infection unventilated and unwashed.
1855 E. C. Gaskell North & South II. xii. 150 Their nerves are quickened by the..confinement in these pent-up houses.
この語源は pen で、インクが閉じ込められているという意味であり、液体感がある。それで鬱憤という感じになるのだろうか。
国語大辞典は以下のような感じである。
1)内にこもりつもった怒りや不満。晴れないうらみ。
*明衡往来〔11C中か〕上本「鬱憤之膓一時九廻」
*釈氏往来〔12C後〕二月日「不致拾謁欝憤尤多」
*平家物語〔13C前〕七・平家山門連署「興福園城両寺は鬱憤をふくめる折節なれば、かたらふともよもなびかじ」
*日葡辞書〔1603~04〕「Vppunuo (ウップンヲ) サンズル」
*信長記〔1622〕八・長篠かっせんの事「一先落給ひ、かさねて此の鬱憤(ウップン)をとげしめ給へとて」
*浄瑠璃・嫗山姥〔1712頃〕四「今生の此身にて此鬱憤はれがたし」
*音訓新聞字引〔1876〕〈萩原乙彦〉「欝憤 ウップン ツモルイキドホリ」
*浮雲〔1887~89〕〈二葉亭四迷〉三・一八「胸に積る昼間からの鬱憤を一時に霽さうといふ意気込で」
*班固‐竇車騎北征頌「唱呼鬱憤、未逞厥願」
(2)(─する)不平、不満の気持が心にこもってつもること。また、そのさま。
*太平記〔14C後〕二四・依山門嗷訴公卿僉議事「此上又南北神訴に及び、衆徒鬱憤(ウッフン)して忿(いか)らば、以外の珍事なるべし」
*中華若木詩抄〔1520頃〕上「今の世には文字ある者をばそねみて、小人どもが朝廷にをかずして流すほどに、それをうっふんにして作りた詩也」
「うっ‐ぷん 【鬱憤】
外へ出さないで心の中に抑えている怒りや恨み。また、そういう気持ちが積もること。「―を晴らす」
「善忠が所領を取りて左馬の助に申し与へんとするを―する折節なり」〈太平記・三五〉
frustration