今日のエスプレッソはもちろん楽しい記事ばかり。アメリカのプロレスと covid-19 の話だとか、WHOとレイディ・ガガの共演の話だとか、キツネザルの臭いを使うメッセージだとか、どれも最高だったが、やはりサラエヴォのハガダー (Sarajevo Haggadah) の話が一番楽しかった。
ハガダーというのはユダヤ教で「過ぎ越しの祝い」(Passover)と呼ぶ儀礼で重要なテキストであるとのこと。そのテキストの一つで、中世のスペインのユダヤ人たちが用いていた美しい書物があり、それがサラエヴォのハガダーである。そのハガダーは、1492年のスペインにおけるユダヤ人追放で外に出て、それから数世紀かかって地中海の沿岸をたどってサラエボに到着したとのこと。20世紀のナチスだとか、多くの複雑な政治的な事情に巻き込まれたが救われ、現在ではサラエヴォの博物館が所蔵している。その際に、イスラム教徒たちがこの写本を守ってきたという美しい話もある。これを素材にした映画が作成されるとのこと。今年の過ぎ越しの祝いは4月8日に始まり4月16日に終わったこととも関係があるのだろう。
そんなこともあって、久しぶりに旧約聖書の出エジプト記を読んでみた。もちろん十戒という神と人間の劇的な契約の瞬間があり、そこは「契約」の意味を知るうえで読んでおいたほうがいい。それと同時に、ユダヤ人が疫病をどのように捉えていたかということがとてもよく分かることも実感した。医学史が疫病のことを考えるときに必読のマテリアルである。
事情はよく憶えていないが、私が小学生の時に、富士宮の映画館でチャールストン・ヘストンとユル・ブリンナーの『十戒』が再演されて、父親と一緒に観に行った。この映画や、子供向けの聖書は、私にとても大きな影響を与えていたこともあって、昔のことを思い出した。ついでだから、エコノミストが推薦したハガダーに関する小説も買っておいた。Wikipedia もリンクを張っている New Yorker に記事を書いた Geraldine Brooks によるベストセラーである。新しい映画もきっと観に行こう。実佳と私がよく行く静岡の映画館は、仏教のお寺が組織しているという分からなさを持っているけれども、きっと上映するだろう(笑)