シェイクスピアのロンドンの占星術医

必要があって、16-17世紀のロンドンで繁盛していた医者、サイモン・フォアマンの研究書を読む。文献は、Traister, Barbara Howard, The Notorious Astrological Physician of London: Works and Days of Simon Forman (Chicago: University of Chicago Press, 2001). 

サイモン・フォアマンは、シェイクスピアの時代のロンドンで開業していた治療者で、詳細な日記や治療記録などを膨大に残している。特に、シェイクスピアの作品の上演を観劇した記録などをつけているので、シェイクスピア学者たちから注目されてきて、何冊もの研究書で取り上げられている。彼の、占星術と組み合わせた医術は大いに繁盛し、特に女性患者に人気があった。そして、その女性患者たちと片っ端から関係を結び、多いときには一日に三人の女性患者と関係を持ったことも日記に記されている、医療倫理の教科書ならば「悪い見本」のような医者である。

この書物は、本格的な分析というより、主題ごとにエピソードを配列したような書物だから、必要な箇所だけ流し読みした。(フォアマンの資料を使った本格的な研究書は、別にもう一冊ある。)フォアマンは大学出だが、医学部で学んだわけではないから、ガレニズムをベースにして、パラケルススの本も含めて色々な書物を読んで、折衷的な医学を実践していた。パラケルススの医学からは、金属・鉱物由来の薬を使うことを覚え、その比率は年を追うにしたがって増加している。また、「哲学者の石」と呼ばれた、卑金属を黄金にし、万病を治す物質の精製に凝って、合計三回それに挑戦している。結局うまく行かなかったけれども。