Entries from 2011-03-01 to 1 month
必要があって、それも緊急の必要があって、中世の稚児と僧侶の性愛についての書物を読む。文献は、田中貴子『性愛の日本中世』(東京:ちくま書房、2004)。特に冒頭におかれた「<稚児>と僧侶の恋愛―中世<男色>のセックスとジェンダー」という章を丁寧に…
今日は無駄話。学会でハワイに来た。ハワイは初めてである。ホノルルの空港には、時代に取り残されたような感覚が漂っていた。「JAL パック」というツアーの宣伝も、私が小学生か中学生の時によく目にした。タクシーでホテルに行く途中でも「タイプライター…
必要があって、布施昌一『医師の歴史―その日本的特長』(東京:中公新書、1979)をチェックする。「医は仁術」という言葉の意味についてまとまった記載がある書物である。貝原益軒は、彼自身が儒学者であり、「医は仁術である。仁愛の心を基本とし、人を救う…
カフカの「流刑地にて」を久しぶりに読み返した。有名な作品だから内容は知っていると思うけれども、メモしておく。ある流刑地で刑の執行にたずさわる「士官」と、そこを訪れた「調査旅行者」との間の会話で小説は進行する。そこでは刑の執行はある特殊な機…
中川清『日本都市の生活変動』(東京:勁草書房、2000)をチェックする。明治初期の社会経済計画『興業意見』では、人民を上中下の三層に分けたときに、その56%は下等に属すると判断し、19世紀末には、横山源之助は、日本社会の大半が下層社会によって覆わ…
もっとずっと前に読んでおかなければならなかった著作を読む。明治維新以降の急激な近代化の成功が、徳川時代の日本の農村に多くを負っていたことを論じるときには必ず引用される文献なので、読んでいないのに内容を理解したような気になってしまっていたが…
同じくギンスブルグから、麦角の幻覚作用について。カルロ・ギンズブルグ『闇の歴史―サバトの解読』竹山博英訳(東京:せりか書房、1992)『ペナンダンティ』には、夜の飛行、動物への返信という、シャーマニズムの影響が認められる。フリウリ地方の民衆は、…
1321年 フランス全土でらい病(ハンセン病)患者の大虐殺が起きる。 カルロ・ギンズブルグ『闇の歴史―サバトの解読』竹山博英訳(東京:せりか書房、1992)に、中世フランスでハンセン病患者が多数虐殺された事件を分析した章がある。この書物の眼目の部分で…
昨日の古典医学の深くて広い鳥瞰にも舌を巻いたけれども、同じ著者が同じ本に「徴づけられた身体」についても、水準が高い章を提供していた。大いに尊敬する。文献は、Holmes, Brook, “Marked Bodies: Gender, Race, Class, Age, Disability and Disease”, i…
同じく授業の予習で、古代の身体について。フーコーの関心を反映して、やはり「性」の章が素晴らしかったから、ここはきちんと教えよう。文献は、Skinner, Marilyn, “Sex”, in Daniel H. Garrison ed., A Cultural History of the Human Body in Antiquity (…
来年度の準備に入った。一般教養の授業では、「身体の歴史」という主題で、新しい内容の一年分の授業を作る予定である。この科目で新しい内容の授業を作るのは5年ぶりくらいだから、気合いを入れて予習をしている。種本としては、Berg 社から出ている、A cul…
必要があって、人に教えていただいた中世の作品である『閑居友』を読む。特に上巻19・20・21 を読む。これらの作品には、谷崎潤一郎が『少将滋幹の母』のインスピレーションとして言及しているとのこと。比叡山の若い僧で、夕暮れに急いで山を出て急いで帰っ…
今日は無駄話です。読んだ本は、とても優れたものでした。Dalrymple, William, From the Shadow of the Holy Mountain: a Journey in the Shadow of Byzantium (1998; London: Harper Perrenial, 2005).出張や旅行に行くときには、仕事関係の本よりも、楽し…
必要があって、いただいた書物に入っている論文を読む。文献は、アルノ・ナンタ「大日本帝国の形質人類学を問い直す―清野謙次の日本民族混血論」坂野徹・慎蒼健『帝国の視覚/死角』(東京:青弓社、2010), 53-79.19世紀以来の人類学という学問を、国民国家…
必要があって、人種論の論文集を読む。文献は、以下の書物に掲載された論文。竹沢泰子『人種の表象と社会的リアリティ』(東京:岩波書店、2009)。藤原辰史「虚ろな表情の<北方人>―<血と土>の画家たちによせて」112-135. 李昇カ(カは火へんに華)「<…
青森のトラホームについての論文を読む。文献は、川内淳史「1930年代地域社会の様相―青森県におけるトラホーム問題対策を中心に」『上越社会研究』no.21(2006), 41-50.東北凶作のあと作られた、東北の農村をたてなおす東北生活更新会・東北更新会などの活動…
必要があって、大正期の精神医学の成立をめぐる言説を分析した優れた研究書を読む。文献は、芹沢一也『<法>から解放される権力―犯罪、狂気、貧困、そして大正デモクラシー』(東京:新曜社、2001)外敵を倒し、東アジアに帝国を確立し、明治政府の元老支配…
必要はなかったけれども、純粋な好奇心で、北海道でしばしば観察された、かぼちゃの食べすぎによっておきる皮膚の黄変についての医学研究を読む。もともとは博士論文だったという。文献は、安斎真篤「南瓜<カロチノーゼ>の本態に就て」『北海道医学雑誌』v…
3月17日・20日に設定されていたメッツル先生のシンポ・ワークショップを中止いたします。 楽しみにされて参加をご予定されていた方が多いと思います。開催日程が決まりましたら、お知らせいたします。
必要があって、明治の神経衰弱について書いた書物を読む。文献は、度会好一『明治の精神異説―神経病・神経衰弱・神がかり』(東京:岩波書店、2003)著者はちょっと不思議な人物で、もともとは英文学者で、19世紀のイギリスの性の問題についての新書や、近世…
必要があって、いただいた書物に入っている論文を読む。文献は、アルノ・ナンタ「大日本帝国の形質人類学を問い直す―清野謙次の日本民族混血論」坂野徹・慎蒼健『帝国の視覚/死角』(東京:青弓社、2010), 53-79.19世紀以来の人類学という学問を、国民国家…
必要があって、一般向けに書かれた20世紀のヨーロッパ史を読んだ。文献はMazower, Mark, Dark Continent: Europe’s Twentieth Century (New York: Alfred A. Knopf, 1999).日本では、歴史学者は一般向けの歴史書を軽視する傾向が強いように感じているが、イ…
岩波の日本思想大系が値崩れしていて、一冊500円にも満たないような値段でアマゾンで投げ売り状態になっている。学術の精髄が投げ売りされていて悲しい半面、それなら買っておこうというあさましさもある。悲しくてあさましい私は、『おもろそうし』という巻…
明治期にハンセン病の治療法を発見したと主張して名をあげた医者、後藤昌文について『明治立志編』の記述を読んだからメモしておく。近代デジタルライブラリーで読むことができる。後藤は美濃国の北方村で医者の家系の家に生まれた。本来ならば家業を継ぐは…
必要があって、『家畜人ヤプー』の作者であると騒がれたことがある元東京高裁判事の回想録を読む。文献は、倉田卓次『続々裁判官の戦後史-老法曹の思い出話』(東京:悠々社、2006)。事態を丁寧に説明して、説得力を持つ。裁判官が構成した事実の語りが説…
必要があって、澤田順次郎『花柳病院』(1913)を読む。『コレクション・モダン都市文化』のシリーズの『病院と病気』の巻に、編者の福田眞人が『脳病院風景』と『神山癩病院概況』とともに入れたもの。これは花柳「病院」と題されているが、副題に「独診自…
必要があって、エイズとジェネリック薬品についての書物を読む。文献は、林達雄『エイズとの闘い―世界を変えた人々の声』(東京:岩波書店、2005)エイズの新薬は特許・知的所有権の関係で高価であるが、世界のエイズの大半が発展途上国で発生しているから、…
1820年代の後半につくられたヒステリー患者の症例誌を復刻して長い解釈を付けた書物を読む。文献は、Goldstein, Jan, Hysteria Complicated by Ecstasy: the Case of Nanette Leroux (Princeton: Princeton University Press, 2010). 著者は19世紀フランスの…
必要があって、「心臓と言う書物」という中世の主題が近現代にどのような影響を持ったかに触れた章を読みなおす。文献は、Jager, Eric, The Book of the Heart (Chicago: University of Chicago Press, 2000).もともとは中世の思想・文化研究の名著である。…
大正・昭和戦前期の日本で独自の進化論思想を展開して大きな影響力を持った丘浅次郎の著作をいくつか読む。『現代日本思想体系』に入っているものを読んだ。日本の思想史・文化史研究者のあいだには、「自然観」と称される研究主題がある。「日本人の自然観…