1530年代のペストと修道院の解散

 

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16世紀初頭のイングランドでは、800ほどの修道院が国の1/4の土地を所有するという現象がおきていて、1530年代の後半に、宗教改革修道院が解散させられ、その跡地が国王や新しいエリートに所有されるようになったことは、初期近代のイギリスにおける大きな変化であった。修道院は中世に大学が形成される前に、昔からのテキストを保存し写本していた重要な哲学や医学の伝統を持つ組織であるが、大学の形成から何が起きたのか私にはよく分かっていなかったので、イングランドの解散に関する新しい研究書を読んでみた。非常に面白い本である。一つ重要な点は、その環境が常にペストの危機と直面していたことである。

 

1530年代のイングランド修道院を解散させることは最初は議会の命令ではじまったが、それが実際に行われる過程は、修道院がある地域における、ローカルな政治、経済、人々の反乱、労働市場が変化して人々が移動することなどの複雑な過程とともに行われた。雨や気候などの環境の変化も大きなインパクトを与えた。これらが起きる環境にかなり大きなインパクトを与えていたのはペストであった。もともと修道院は村や街がペストに襲われたときに、おそらく集落を離れた地域にある修道院の建物を提供して、レフュジー(避難者)に施設を提供する機能を持っていた。そのため、修道院の建築が破壊された後に、その地にペストがやってくるなどの事例があった。戦争、経済への打撃、農作物が入手できない飢饉とともに、ペストはイングランドに常在していて、何かの折に各地で流行するというパターンを取っていた。

 

ペストの授業や修道院の授業で言及すると良いし、関東大震災の折の震災とレフュジーのことを考える時に助けてくれるだろう。