Entries from 2011-10-01 to 1 month

『猿の惑星』

帰りの飛行機は、映画が新しい月に入っていた。搭乗した日が30日、降りた日が31日だったから、映画の日程が変わっているとは思っておらず、またカンフー・パンダ2を観るのかと思っていたので、予想しない嬉しさで、うきうきして帰ってきた。『猿の惑星 ジェ…

ナチスの人体実験

同じくワークショップからの記事。オクスフォード・ブルックス大学の Paul Weindling の報告を久しぶりに聞いて、彼がしばらく前から進行させている、ナチスによって人体実験をされた人々を調べる大プロジェクトの様子を知る。戦後の調査や補償などの調査の…

オスマン帝国のペスト

ドイツのワークショップで、ずっと知りたいと思っていた主題をまさにリサーチしている学者の報告を聞いて、とてもうれしかった。その主題というのは、オスマン帝国のペストである。ペストは、後記中世から近世にかけてのヨーロッパの社会の柱の一つとなる事…

『もしドラ』映画

飛行機の中で映画『もしドラ』を観る。主人公の野球部マネージャーは今を時めくAKBの前田敦子さんが演じている。そうか、去年のベストセラーだったこの小説はこういう話だったのか。前田さんは、やっぱりAKBの真ん中で歌って踊っているのがいい。

聖コスマスと聖ダミアノス

『黄金伝説』から、医学の聖人の聖コスマスとダミアノスのエピソードをチェックする。脚の移植手術を扱った話で、後世の医学にいろいろと影響を与えたと思うけれども、詳しいことは私は知らない。この二人の聖人は、西洋の医学の歴史を物語るときに、アスク…

栄西『喫茶養生記』

栄西『喫茶養生記』古田紹欽訳注(東京:講談社学術文庫、2000)日本にお茶を紹介した書物として名高い『喫茶養生記』を読み返す。仏教の枠組みで理解された生理学をもとにして、お茶を飲むことの価値を称揚した養生論である。残念なことに、仏教の生理学の…

港町のネットワーク

岡本哲志『港町のかたち―その形成と変容』(東京:法政大学出版局、2010)17世紀後半には、舟運航路と港町が相互補完するかたちで充実し、海、および河川の船による舟運のネットワーク化が完成する。「津々浦々」という言葉が「いたるところに」という意味に…

医学中央雑誌の全画面デジタル・アーカイヴ

2011年10月18日に、国会図書館で、『医学中央雑誌』の1903年の創刊号から1983年までの全画面デジタル・アーカイヴが公開された。80年間の刊行物の全紙面のページを見開きで撮影し、巻・号ごとにまとめたものである。このデジタル・アーカイヴへの収録が終了…

コレラ踊り

江戸期から明治初期を中心に、コレラが流行したときに、村人があつまって踊りを踊るなどの行為をして、明治期には政府官憲に禁じられて対立し、「コレラ騒動」となった。これは非常に有名な一連の事件で、これをどのように解釈するかということは日本の公衆…

井戸の歴史

秋田裕毅『井戸』(東京:法政大学出版局、2010)井戸の歴史の本に、何かいい情報はないかと思ってチェックした。井戸の定義:「地面を湧水層まで掘削し、地下水を獲得するための人工的な土杭(どこう)、つまりは竪掘り井戸」 2「現在われわれが井戸と呼ん…

ブロイラー「スキゾフレニア」100周年をめぐって

Berrios, German E., “Eugen Bleuler’s Place in the History of Psychiatry”, Schizophrenia Bulletin, 37(2011), 1095-98.今年はスイスの精神科医のブロイラーが、『早発性痴呆または精神分裂病群』(1911)で「スキゾフレニア」という疾患概念を提出してか…

麻酔のリスクと国家・科学

Rey, Roselyne, The History of Pain, translated by Louise Elliot Wallace, J.A. Cadden, and S.W. Cadden (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1995).必要があって、痛みの歴史の麻酔の部分を読む。麻酔が導入された1840年代後半には、それはま…

スキャリー『身体の痛み―世界の構成と脱構成』

Scarry, Elaine, The Body in Pain: The Making and Unmaking of the World (Oxford Oxford University Press, 1985)「痛み」という現象は、単純で、人間の原始や本能に関する主題に見えるが、そこには人間と世界と言語についての深遠な問いがあるという。そ…

マオリの精神病と入院の歴史

Barry, Lorelle and Catharine Coleborne, “Insanity and Ethnicity in New Zealand: Maori Encounters with the Auckland Mental Hospital, 1860-1900”, History of Psychiatry, 22(2011), 286-301.精神病院というのは、個人を診断によって分類するところで…

ゼンメルヴァイス

Semmelweis, Ignaz, The Etiology, Concept and Prophylaxis of Childbed Fever, translated by K. Codell Carter (Madison, Wisconsin: University of Wisconsin Press, 1983).1840年代にウィーンの産科病棟で産褥熱の原因を発見したゼンメルヴァイスが、18…

アユールヴェーダの伝染病論

ペンギン版の簡単なアユールヴェーダのテキストを少しチェックした。文献は、The Roots of Ayurveda: Selections from Sanskrit Medical Writings, translated with an Introduction and Notes by Dominik Wujastyk (London: Penguin Books, 1998)伝染病の原…

「ポッパーさんのペンギン」/「カンフー・パンダ2」

飛行機で観た映画。ペンギンが出てくる心温まるファミリー・コメディと、カンフーをするパンダが活躍するディズニーの傑作アニメの第二弾「ポッパーさんのペンギン」私が小学生のころに読んだ、リチャード・アトウォーターの童話が原作である。アメリカの田…

ファシズム下イタリアの精神医療

Piazzi, Andrea, LuanaTesta, Giovanni del Missier, Mariopaolo Dario, and Ester Stocco, “The History of Italian Psychiatry during Fascism”, History of Psychiatry, 23(2011), 251-267.ナチ時代の精神医学が行った巨大な蛮行を知ると、同じファシズム…

進行麻痺とマラリア療法の歴史

Kragh, Jesper Vaczy, “Malaria Fever Therapy for General Paralysis of the Insane in Denmark”, History of Psychiatry, 21(2010), 471-486.進行麻痺に対するマラリア療法の歴史をデンマークで調べたコンパクトな論文。私がいま個人的にこの主題を日本で…

17・18世紀の精神病患者の収容

Dilling, Horst, Hans Peter Thomsen and Fritz Hohagen, “Care of the Insane in Luebeck during the 17th and 18th Centuries”, History of Psychiatry, 21(2010), 371-386.リューベックにおける貧民救済の一環として17世紀の初頭に建てられた特別に狂人を…

美術館での医学教育

『ガーディアン・ウィークリー』でイギリスの指導的な癌の専門家で美術評論家でもあるマイケル・ボームの記事を読んで、それに共感するかどうかは別にして、イギリスで医者による medical humanitiesが成熟して形をなしてきているのを実感する。医療人文学の…

統合失調症の遡及的研究

Fraguas, David, “Problems with Retrospective Studies of the Presence of Schizophrenia”, History of Psychiatry, 20(2009), 61-71.人間のさまざまな行動を精神医学の診断名で記述することは、19世紀以来広まったものの見方であり、近現代の重要な特徴で…

ノルウェイの児童精神医学

Ludvigsen, Kari and Asmud Arup Seip, “The Establishing of Norweigian Child Psychiatry: Ideas, Pioneers and Institution”, History of Psychiatry, 20(2009), 5-26.ノルウェイの児童精神医学の発展。1920年代には、アメリカ・イギリスから輸入された精…

小松和彦『異人論』

『異人論』(東京:ちくま学芸文庫、1995)異人に対して民族社会の人々がいだいていたイメージが両義的なものであったことは、これまで多くの研究者によって指摘されてきた。たとえば、岡正雄は「自分の属する社会以外の者を異人視して様々な呼称を与え、畏…

Sir John Floyer

Floyer, Sir John, “Advice to a Young Physician”, introduced and edited by Denis gibbs and Philip K. Wilson (York: William Sessions Limited, 2007)ジョン・フロイアーは、18世紀はじめのイングランドの医師で、スタフォードシャーのリッチフィールド…

ワトーとボードレールの「シテール島」と梅毒

1717年にフランスの画家アントワーヌ・ワトーは、アカデミーの正会員に入会する申請作品として、『シテール島への船出』という作品を提出した。ロココの『雅宴画』を代表として知られている。この作品が描くのがシテール島「への」船出なのか、シテール島「…

ブルトン『ナジャ』

アンドレ・ブルトン『ナジャ』巌谷國士訳(東京:岩波書店、2003)アンドレ・ブルトンの『ナジャ』は、精神病者の街での生活を理解するために、まず読むべき歴史資料である。これは、日本の精神病者の私宅監置を理解するためには、呉秀三の有名な本とともに…

17・18世紀のアメリカの両性具有

(Reis, Bodies in doubt より)18世紀の半ばに、ハミルトン医師はこのように記している。「私は、3時半にデラウェア州のニューキャッスルを出発し、街から1マイルほどのところで怪物的な外見のものを見た。それは、荷車の御者で、半分男で半分女であった。頭…

人間の匂いがする土

神話の中で人間の誕生なり創作なりが語られるとき、いろいろなヴァージョンがあるが、キリスト教では土という定まった形がない可塑的なものから、人間の「かたち」を作ることになっている。ギリシア神話にも土から人間を作るという主題があるけれども、この…

栗原はるみとイギリスの料理本など

どの家にもコアの料理本があると思う。うちの料理本は、実佳の友人から頂いた向田邦子さんの本と、日本に帰ってから買った栗原はるみさんの本である。味についていえば、どちらもこくが強くてパンチ力がある料理に特徴があり、お互いに似ていると思う。栗原…