Entries from 2012-05-01 to 1 month
高畑直彦・七田博文『いむ―アイヌの一精神現象』(札幌:n.p., 1988)アイヌのイムについて書かれた比較的新しい書物を読む。イムについての文献の主たるものを列挙するだけでなく、それらから重要な部分を抜粋しており、非常に有益な書物である。著者は札幌…
高橋英次『優生学序説』(東京:医学書院、1952)戦後の優生学の議論は、優れた女性の結婚・出産についてもいろいろと発言している。もちろん女性の教育は望ましい。しかし、多くの論者が恐れたのが、高い教養を受けた女性が独身でいる傾向が高く、出産をし…
北海道庁警察部『旭川区近文部落―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)北海道庁警察部『余市郡余市町―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)北海道庁警察部『沙流郡の一部 室蘭郡の一部―旧土人衛生状態調査復命書』(1916)大正5年に出版されたアイヌの健康調査…
高野六郎「精神衛生国策」『精神衛生』10(1936), 1-9;「優生断種に対する賛否論批判」『精神衛生』10(1936), 23-26.この時期の高野六郎は、衛生局の予防課の官僚であるが闊達な文章をあちこちに書いていて、官僚として言うべきではないような本音を無防備に…
松原久人「精神薄弱と断種法」『精神衛生』14(1942), 18-21.著者については私は調べていないが、厚生省の優生課の前課長である。いかにも官僚らしい口ぶりで、「来年の予算に少し予算をつけて、どれくらいの優生手術が必要なのか調査しよう」と考えているこ…
Perrins, Robert John, “Doctors, Disease, and Development: Engineering Colonial Public Health in southern Manchuria, 1905-1926”, in Morris Low ed., Building a Modern Japan: Science, Technology, and Medicine in the Meiji Era and Beyond (Lond…
Haefner, Heinz and Wolfram and der Heiden, “The Contribution of European Case Registers to Research on Schizophrenia”, Schizophrenia Bulletin, 12(1986), 26-51.ヨーロッパやアメリカでは、精神病院は公立であることが標準的であったので、精神科の…
岡田温司『キリストの身体-血と肉と愛の傷』(東京:中央公論新社、2009)「身体の歴史」の授業で、キリストの身体に触れて説明する箇所があったので、以前から読みたいと思っていた著者の書物を読んだ。非常に優れた模範的な新書で、博識と深い洞察と入門…
Susser, Ezra S., “Schizophrenia after Prenatal Exposure to the Dutch Hunger Winter of 1944-45”, Archives of General Psychiatry, 49(1992), 983-988.妊娠の初期に栄養が不足することは、スキゾフレニアのリスクファクターになるという仮説があり、そ…
Gejman, Pablo V., “Ernst Ruedin and Nazi Euthanasia: Another Strain on His Career”, American Journal of Medical Genetics (Neuropsychiatry Genetics), 74(1997), 455-456.リューディンは、Aktion T4を設計し執行した精神科医たちと非常に近かったと…
高野六郎「精神衛生国策」『精神衛生』10(1936), 1-9;「優生断種に対する賛否論批判」『精神衛生』10(1936), 23-26.この時期の高野六郎は、衛生局の予防課の官僚であるが闊達な文章をあちこちに書いていて、官僚として言うべきではないような本音を無防備に…
Haefner, H., “Epidemiology of Schizophrenia. The Disease Model of Schizophrenia in the Light of Current Epidemiological Knowledge”, European Psychiatry, 10(1995), 217-227.リューディンや内村が、当時は精神分裂病と呼ばれていた疾患と遺伝の関係…
山崎真也「精神科診断において操作的診断基準は信頼性問題を解決したか」『医学哲学医学倫理』27(2009), 79-88.DSM-III以降のアメリカの精神医学が舵を切った新しい企画がいわゆる「操作主義的診断」であった。それまでの精神科医の間で同じ患者を見たとして…
永塚憲治「新たに発見された『素女妙論』の写本―その翻字と校合―」『大東文化大学 中国学論集』29(2011), 101-144.『素女妙論』という中国で明代に刊行されたとされている房中術の書物があるが、中国刊本が確認されず、日本由来の写本でしか内容を伺うことが…
吉益脩夫「断種問題に就いて」『精神衛生』6(1934), 15-19.日本の優生学において断種の賛成派の一方の雄であった東大助教授の吉益の短い論考を読む。断種の必要がある理由は二つあり、一つは文明の進歩によって弱者への福祉が発展して適者生存の原理が働くな…
今日はまったくの無駄話。自分と寸分たがわぬほどそっくりな人間が世の中に一人いて、その人に出会った瞬間に消滅するとか、その手の都市伝説がある。これまで考えたこともなかったが、シカゴの空港で「あなた、ロッテルダム大学の教授でしょう?」と見知ら…
植木哲也「植民学講座のアイヌ民族研究(1)―差別講義事件と植民学講座」『環太平洋・アイヌ文化研究』8(2010), 1-16.1977年に北海道大学経済学部で起きた当時の学部長であった林善茂による差別発言を素材にして、この差別発言がどのような知的系譜の中で生…
飛行機の中で『華麗なる対決』というフランス製の西部劇のお色気コメディを何気なく観たら、これがおばか映画の傑作の掘り出しもので、とても楽しい気分になれる作品だった。魅力の中心は、ブリジット・バルドーとクラウディア・カルディナーレという当時を…
コレラを避けて旅行する―河井継之助「塵壺」より一仕事片付けた夕方に、『日本庶民生活資料集成』を眺めていたら、面白い記述に出会ったのでメモする。越後長岡藩の河井継之助が安政6年(1859)の7月に江戸を発って備中松山藩に遊学したときの物語である。18…
Zerbin-Ruedin, Edith and Kenneth S. Kendler, “Ernst Ruedin (1874-1952) and His Genealogic-Demographic Department in Munich (1917-1986)”: An Introduction to Their Family Studies of Schizophrenia”, American Journal of Medical Genetics (Neuro…
Weber, Matthias M., “Ernst Ruedin, 1874-1952: A German Psychiatrist and Geneticist”, American Journal of Medical Genetics (Neuropsychiatric Genetics), 67(1996), 323-331.自然科学系の雑誌に載った論文だけれども、歴史研究のプロの仕事である。著…
Koya, Yoshio, “Sterlization in Japan”, Eugenics Quarterly, 8(1961), no.3, 135-141.戦前の厚生省の健康政策の立役者であった古屋芳雄は、この論文が執筆された時期には日本医科大学の教授であった。その古屋が、優生保護法(1948)のもとにおける断種に…
橋本明「わが国の優生学・優生思想の広がりと精神医学者の役割―国民優生法の成立に関連して」『山口県立大学看護学部紀要』創刊号(1997), 1-8.優生学と精神医学の関係についての仕事を読む。1997年ということは、この論文が出てから15年になるということな…
Fuller-Torrey, E., and Robert H. Yolken, “Psychiatric Genocide: Nazi Attempts to Eradicate Schizophrenia”, Schizophrenia Bulletin, 36(2010), 26-32.著者のTorrey は、精神病の疫学を不用意なデータで歴史に広げて議論をする悪い癖があって、歴史学…
今日は無駄話です。Darwin, Charles チャールズ・ダーウィン『種の起源』、リチャード・リーキー編、吉岡晶子訳(東京:東京書籍、1997)養老孟司が『種の起源』の図説・抄訳版に序文を書いていて、そこで不思議なことを言っていた。19世紀の偉大な思想家と…
Blacker, C.P., “Dr Yoshio Koya: A Memorable Story”, Blacker, C.P., “Dr Yoshio Koya: A Memorable Story”, The Eugenics Review, 55(1963), no.3, 153-157.日本の家族計画についての英語の論文集についての長い論評である。その書物は、厚生省の官僚で戦…
H.E. ジゲリスト『文明と病気』上・下、松藤元訳(東京:岩波書店、1973)ドイツからアメリカに移住してアメリカの医学史研究の基礎を築いた医学史家のジゲリストは、ナチズム全体に対しては激しい批判をしており、ナチスの断種政策についても「非科学的」で…
Dowbiggin, Ian Robert, Keeping America Sane: Psychiatry and Eugenics in the United States and Canada 1880-1940 (Ithaca: Cornell University Press, 1997).アメリカとカナダの精神医学と優生学の複雑性を、実際に精神病院などにおいてワゼクトミーな…
速水融・小嶋美代子『大正デモグラフィ―歴史人口学で見た狭間の時代』(東京:文芸春秋、2004)速水先生が学生と共著された『大正デモグラフィ』をチェックする。基本的に駒場の科学史で育った私が、イギリスに留学して一番驚いたことは、イギリスにおいては…
Y婦人「未亡人の心理―現実界を離れて」『変態心理』4巻4号(1919), 387-394. 「婦人は、ヒステリーか、結婚か、宗教(信仰)かによらなければ生きてゆかれないものだという婦人についての批評をいつか聞きました。本当に当たっているかもしれません。前に私…