Entries from 2015-01-01 to 1 year

W.F. バイナム『医学の歴史』が翻訳・刊行されました。(丸善の「サイエンス・パレット」)

W.F. バイナム『医学の歴史』を翻訳し、丸善出版の「サイエンス・パレット」のシリーズから刊行しました。オクスフォード大出版局の Very Short Introduction の一冊で、コンパクトに医学の歴史を解説した傑作です。古典古代からの長い時期をカバーしていま…

シャンタル・トマ『王にに別れをつげて』より、閉じ込められたハンセン病患者、性病患者についての暗い想像力の部分をメモ

Thomas, C. and 祐. 飛幡 (2012). 王妃に別れをつげて, 白水社. 著者は18世紀フランスの歴史学者。マルキ・ド・サドについて、非常に面白い著作を書いている。本書は小説で、歴史学的に興味深い仕方で構成されている。舞台はヴェルサイユ宮殿で、フランス革…

ハンセン病人類遺産世界会議(1月28-30日)

笹川記念保健協力財団より、ハンセン病の人類遺産世界会議のご案内をいただきました。1月28-30日です。 さて、このたび(公財)笹川記念保健協力財団は、急速に失われつつあるハンセン病の歴史の保存を促進するため、世界約20カ国の当事者、政府機関、…

英語による講義とエッセイ(いわゆる「即レポ」)について

昨年度から慶應の1・2年生を主体とした一般教養の「歴史学」の授業を英語で講義している。それについてメモ。 同じように英語での講義に対応している教員は多いだろうし、他の外国語での講義をはじめている教員も多いと思われるので、何かの参考になれば。 …

森茉莉「恋人たちの森」(1961)

森, 茉莉. (1982). 恋人たちの森. 東京, 新潮社, 1982.6. 「恋人たちの森」 1961年、新潮社刊『恋人たちの森』に収録、1982年刊行の著作集52-94を参照。 男性同士の同性愛を含めた多彩な性と愛情の関係を綴った作品。フランス文学を研究する大学助教授の「…

ハンセン病の歴史を語る 人類遺産世界会議 ご案内

笹川財団さまより、「ハンセン病の歴史を語る 人類遺産世界会議」の国際シンポジウムのご案内をいただきました。2016年の1月28日から30日まで、ハンセン病の歴史資料と、過酷な差別の環境の中でその疾病を生きた人々の記憶を保存するためのシンポジウムが開…

ノスリを見てウグイスを聞いたこと

家からノスリを見かけたのでメモ。家の前には田んぼが広がっていて、今は冬枯れの風景になっている。そこに数本立っている電柱のてっぺんにタカ類が一羽止まっていた。地面で何か行動してから電柱に飛び上がったという感じがした。トビよりも小さく、体の色…

近世農村の天然痘の伝搬

Evernoe を使いだして、そのテストの意味もかねて、メモをアップロード。 渡辺, 理絵. (2010). "近世農村社会における天然痘の伝播過程――出羽国中津川郷を事例として――." 地理学評論 Series A 83(3): 248-269. 最上徳内 1790年に蝦夷が痘瘡の流行に際して、…

今年最後のバラの切り花

今年最後のバラの切り花。庭にあるバラを皆切ってみた。上の写真の小輪のピンクは名前が分からないけれども、挿し木でよく増えて、いまでは10株近くあり、他人様に差し上げたりしている。薄いピンクはヘリテージ。下の写真の濃いピンクはガートルード・ジキ…

『トスカ』「歌に生き、恋に生き」とイタリア語の時制

新国立劇場が着実に定着している一つのしるしが、最近のプログラムの充実だと思う。毎回、読むのが楽しみな記事が多い。一昔前のプログラムには読みどころがない記事も目立ち、精神科医の香山リカさんが評論風の文章を書いたりしていたのは、申し訳ないけれ…

現代アートと歴史資料

私が保管している精神病院の症例誌を用いて、飯島由貴さんが現代アートを作成し、東京と名古屋で展示している。名古屋で展示された愛知県美術館の学芸員の中村史子さんにお話しを伺いに行き、中村さんのお仕事をいくつか頂いたので、メモ。 中村,史子「見え…

演題募集―<長い19世紀>における医療と近現代の生活(2016年9月オクスフォード大学)

2016年にオクスフォード大学で開催される医学史のコンファレンスの演題募集。情報化社会、グローバライゼーション、急速な変化、ストレス、過大な負荷、そしてこれらにまつわる社会の変化と疾病と医療。 これらは現代の問題であるかのようですが、すべて、19…

医学・医療史からみる東洋と西洋―東洋学講座(11/25-27)

東洋文庫にて、11月25日、26日、27日の三日間にわたって、「医学・医療史からみる東洋と西洋」という公開講座が開催されます。ポスターをご覧ください。 私は26日の担当で、中世から初期近代のヨーロッパの「書物の医学」についてお話いたします。専門の領域…

17世紀の輸血実験と精神病患者

17世紀の後半にイギリスとフランスで動物の血液を人間に移す「輸血」が行われた時に、その人間がいずれも精神病患者だったことのメモ。文献は、スター『血液の物語』と、ピープス(Samuel Pepys, 1633-1703) の日記やイギリスの自然哲学者リチャード・ロウア…

『ダウン症の歴史』講演会―デイヴィド・ライト教授(カナダ・マッギル大学) 10月27日(火) 18.30-20.00 慶應三田キャンパス

デイヴィッド・ライト教授の講演会 講演内容はダウン症の歴史について。申込み不要でどなたでも参加できます。 ※講演は日本語訳配布、質疑応答は通訳付きです ●日 時: 10月27日(火) 18:30~20:00 ●場 所: 慶應義塾大学 三田キャンパス 南校舎473★三田…

精神医療史とアーカイブズ 第二回研究会(10月23日)

以下の日程で、精神医療史とアーカイブズの第二回研究会が開かれます。ご自由にご参加ください。場所は、来往舎2Fの小会議室になります。

『ダウン症の歴史』―マッギル大学・デイヴィッド・ライト教授講演会(10月27日)

<JDS後援>『ダウン症の歴史』の原著者デイヴィッド・ライト教授の講演会、慶應義塾大学で開催(無料・申込み不要) デイヴィッド・ライト教授の講演会 講演内容はダウン症の歴史についてで、申込み不要でどなたでも参加できます。 ※講演は日本語訳配布、質…

<指紋>と個人アイデンティティの形成の歴史

チャンダック・セングープタ『指紋は知っていた』(2004) をチェック。日本語に翻訳される医学史・科学史の書物にありがちな特徴を持ち、これを問題と言うべきか嬉しい悲鳴というべきか、よく分からないが、まずはそれを書いておく。 近年の欧米、特に英語圏…

アンドリュー・スカル『文明と狂気』(2015)

精神疾患と精神医学の歴史。ミシェル・フーコー『狂気の歴史』から半世紀たち、英語圏、ヨーロッパ、そしてそれ以外の数多くの地域で、あらゆる側面で研究が進展し、深まり、広がりました。日本においてもその動きは確実に始まっています。古典古代にはじま…

Globalization of Sanitary Convention in the early 20c / 20世紀初期の新たな国際衛生秩序 

Read an interesting paper on the International Sanitary Convention in 1926, which situated the new international sanitary measures in changing situation of the world where Europe was no longer the single arbiter of the prevention of transn…

Psychoanalysis and its parasitic power / 精神分析の「寄生力」

An interesting point of the parasitic power of psychoanalysis. Psychoanalysis has been very good at expanding into fields and subjects that are not limited to psychiatry or even medicine. It has influenced philosophy, literature, arts, eve…

医療・文化・社会研究会 『宗教・文化・精神療法』 2015年10月5日(月) 18:00~20:30

医療・文化・社会研究会 『宗教・文化・精神療法』のお知らせ 開 催 日 時: 2015年10月5日(月) 18:00~20:30 場所: 慶應大学三田キャンパス 南校舎5階 452 プ ロ グラ ム: 1) Religion’ and ‘Culture’ as Therapeutic Categories in the Work of Ko…

Takuan and Medical Ideas of Zen Busshism 沢庵和尚と禅宗の医学理論

片渕, 美穂子. (2009). "17世紀養生論における身体観 : 沢庵『医説』及び『骨董録』を中心に." スポーツ史研究(22): 33-39. The author discusses the image and the concept of the body in books of regimen in seventeenth-century Japan, focusing on tw…

Ovarian cancer and the metaphor of the "silent killer" / 卵巣がんと「サイレント・キラー」という比喩について

Jasen, P. (2009). "From the “Silent Killer” to the “Whispering Disease”: Ovarian Cancer and the Uses of Metaphor." Med Hist 53(04): 489-512. A very interesting paper that analyses the power of metaphor, or “to examine the history and impli…

軍需産業のマテリアル・カルチャーの史料? 

呉の海軍工廠が生産した鉄鋼を所有している方がいます。 科学史や医学史では「マテリアル・カルチャー」が重要な研究手法になっています。文書的な史料だけでなく、過去に作られたモノを用いると色々なことを知ることができます。医学史では、やはり薬物が有…

死亡率の減少と有病率の増加という逆説 

慶應義塾大学の教養研究センターは、10月6日より、「文化としての病と老い」のタイトルで、4回の講演と2回のワークショップを開催します。医師にとどまらず、医学史や医療人類学の研究者、文学研究者、舞踏家、歌舞伎研究者など多様な分野から病と老いを問い…

柳田國男「食物と心臓」

柳田國男が「食物と心臓」という文章で、餅はもともと心臓の形を擬したという説を論じている。食物の主題に関する興味深い話で、もとはさまざまな機会に執筆した文章を昭和15年に集成したものである。心臓以外にもさまざまな身体の主題が食物との関連で論じ…

杉浦日向子『百物語』の瘴気と瘧について

お昼を食べた後のパワーナップ(笑)で、杉浦日向子さんの漫画である『百物語』をめくっていた。江戸時代に設定されたとても良い感じの妖怪譚・<あやかしの物語>であり、何気ない生活の中の不気味な魑魅魍魎たちが、禁欲的にシンプルな描画で表現されてい…

医学史は何の役に立つのか― 科学技術政策懇談会(9月15日)講演 

「医学史は何の役に立つのか」 9月15日の夕刻に開催された「科学技術政策懇談会」で、「医学史は何の役に立つのか」という話題提供を致しました。10名から20名ほどの、文部科学省の科学政策に関連する皆さまが聴き手でした。皆さまがくつろいだ雰囲気を作っ…

Mika Suzuki on Jane Austen

実佳が、ジェイン・オースティンの Pride and Prejudice についての論文を Critical Survey 誌に掲載しました! たしか、彼女の卒業論文で取り上げた作品だったと記憶しています。おめでとう! Mika Suzuki, "Sharing One's Story and 'a Faithful Narrative…