Entries from 2006-10-01 to 1 month

ブランデンブルクの宮廷産婆

17世紀ドイツの宮廷産婆が書いたマニュアルを読む。文献はSiegesmund, Justine, The Court Midwife, edited and translated by Lynne Tatlock (Chicago: The University of Chicago Press, 2005). 出産の歴史や女性の身体の歴史が歴史の一つの分野として確立…

「ジャーヴィスの法則」を知っていますか

精神病院の疾病地理学の論文を読む。20年この分野を研究していて、自分が全く知らなかった「法則」があったことに愕然とする。文献はPhilo, Chris, “Journey to Asylum: A Medical-Geographical Idea in Historical Context”, Journal of Historical Geograp…

フェミニズムと医学史

未読山の中からフェミニズム医学史の論文を読む。文献はTheriot, Nancy M., “Women’s Voices in Nineteenth-Century Medical Discourse: A Step toward Deconstructing Science”, Signs, 19(1993), 1-31. 19世紀の女性の神経病や精神病の扱いはフェミニズム…

人面瘡

しばらく前に論文を頂いて紹介した香西さんが研究会で「人面瘡」の話をしてくださることになって、課題図書を何点か指定された。そのうちの一冊を読む。文献は横溝正史『人面瘡』(東京:角川文庫、1995)「ネタバレ」と言うのだろうか、推理小説の謎解きを…

タンゴと結核

ラテンアメリカの医学史の論文集に目を通す。Armus, Diego, ed., Disease in the History of Modern Latin America: From Malaria to AIDS (Durham, NC.: Duke University Press, 2003) 何人かの先生たちと一緒に「近代日本の医学と病気」というような感じの…

今日はお休みをいただきます

今日はお休みをいただきます。

微生物の狩人

出張の特急の中でポール・ド・クライフの『微生物の狩人』を読む。 岩波文庫から上下で訳が出ている。 クライフの『微生物の狩人』は、昨今の医学史研究者の間では悪名高い古典である。若い医学史の研究者の間では、読んだことがある人より、読まないまま悪…

マラリアと農村再建

同じくマラリア関係の論文を読む。文献は Litsios, Socrates, “Malaria Control, the Cold War, and the Postwar Reorganization of International Assistance”, Medical Anthropology, 17(1997), 255-278. 戦間期には農村衛生が国際的な衛生のアジェンダに…

マラリア撲滅の国際政治学

WHOが1955年から始めた無茶なマラリア撲滅計画を分析した優れた論文を読む。文献はPackard, R.M., “‘No Other Logical Choice’: Global Malaria Eradication and the Politics of International Health in the Post-War Era”, Parassitologia, 40(1998), 217…

ブラジル移民の黄熱病

経済開発とグローバライゼーションと病気の歴史の大著を読み返す。文献はWatts, Sheldon, Epidemics and History: Disease, Power and Imperialism (New Haven: Yale University, 1997). この文献は以前にも取り上げたが、読み返して面白い情報があったので…

アメリカの発疹チフス

同じく新着雑誌から。アメリカではなぜ発疹チフスが流行しなかったという論文を読む。文献はHumphreys, Margaret, “A Stranger to Our Camps: Typhus in Am erican History”, Bulletin of the History of Medicine, 80(2006), 269-290. どの地域にどの病気が…

高橋お伝の性器標本の一つの背景

いつものように面白い低人さんの記事「おでん」へのコメントです。文献紹介をかねて。文献は、Lrombroso, Cesare and Guglielmo Ferrero, Criminal Woman, the Prostitute, and the Normal Woman , translated with a new introduction by Nicole Hahn Rafte…

人痘の民衆文化

別の新着雑誌から。18世紀のニューヨークにおける牛痘の受容についての論文を読む。文献はGronim, Sara Stidstone, “Imagining Inoculation: Smallpox, the Body and Social Relations of Healing in the Eighteenth Century”, Bulletin of the History of M…

薬用ミイラ

今回新着の Social History of Medicine は面白い論文が目白押しである。この雑誌から三本目の文献紹介。初期近代の薬用ミイラについての論文を読む。文献は、Sugg, Richard, “’Good Physic but Bad Food’: Early Modern Attitudes to Medicinal Cannibalism…

大都市と精液漏

同じく新着雑誌から。ヴィクトリア時代の電気療法について。文献はMorus, Iwan Rhys, “Bodily Disciplines and Disciplined Body: Instuments, Skills, and Victorian Electrotherapeutics”, Social History of Medicine, 19(2006), 241-259. ヴィクトリア時…

「病院研究は医学史の矢倉戦」

パリの病院の medicalization は、フランス革命と平行して進んだいわゆる臨床医学革命のはるか以前から始まっていたという論文を読む。文献はMcHugh, Timothy, J., “Establishing Medical Men at the Paris Hotel-Dieu, 1500-1715”, Social History of Medic…

医者の肖像画

医者の肖像画 医者の視覚的表象についての論文を読む。文献はLawrence, Christopher, “Medical Minds, Surgical Bodies: Corporeality and the Doctor”, Science in Caricature: Historical Embodiments of Natural Knowledge (Chicago: University of Chica…

シークレットバトン

hitomidoniine さんから頂いたシークレットバトン。 質問を公表しないので、回答だけ見てどんな質問なのか各自推測して楽しむ。 「次にバトンをやる」と申し出てると質問を知ることができるという企画。 好奇心につけこんだあざとい手法で、熱病のように蔓延…

アルコールせん妄とE.A.ポオ

新着雑誌から。フィラデルフィアの医者たちによる「アルコールせん妄」 delirium tremens の診断が、どのような社会的背景で広まったかを論じた論文を読む。文献はOsborn, Matthew Warner, “Diseased Imaginations: Constructing Delirium Tremens in Philad…

クイズ: 源氏の君の最後の恋!

『黒の過程』がとても面白かったので、ユルスナールの別の作品も読んでみる。短編集『流れる水のように』の中の「姉アンナ・・・」の背景はイタリアのマラリアで、マラリアの熱病の雰囲気が的確にストーリーに写されていて面白かったが、たまには医学史を離…

ユルスナール『黒の過程』と「医学と文学」

マルグリット・ユルスナール『黒の過程』岩崎力訳(東京:白水社、2001)を久しぶりに読み返す。実に20年ぶり。内容はきれいに忘れていた(笑) 日本の医学部の学生向けに、アメリカやイギリスで定着している「医学と文学」の授業を教えるとしたら、どんなコ…

妄想の長期変動

精神病の歴史疫学の論文を読む。文献はRobinson, A.D.T., “A Century of Delusions in South West Scotland”, British Journal of Psychiatry, 153(1988), 163-67. 精神病の歴史疫学 - どの時代にどんな精神病がどれだけ存在したかを調べる学問である。梅毒…

健康転換の二つのパラダイム

途上国の健康政策における「医療」の貢献を評価する論文を読む。文献はWarren, Kenneth S., “The Evolution of Selective Primary Health Care”, Social Science and Medicine, 26(1988), 891-898. マキーオンの古典的な論文以来、19世紀以来のイギリスなど…

ラジオ番組

今日もパーソナルな話をします。 私はBBCのラジオをポッドキャストでよく聞く。MP3プレイヤーにDLして、車を運転するときや、ジムやジョギングをしながら、英語のシャドウイングをする。英語の練習にもなるということもあるが、番組の質が圧倒的に高い。その…

カリブ海のインフルエンザ

1918-19年のインフルエンザ・パンデミーをカリブ海の脈絡で研究した論文を読む。文献は、Killingray, David, “The Influenza Pandemic of 1918-1919 in the British Caribbean”, Social History of Medicine, 7(1994), 59-87.鳥インフルエンザの脅威もあっ…

コロンブス航海誌

出張の新幹線の中などでコロンブスの航海日誌を読む。文献は『コロンブス航海誌』林屋永吉訳(東京:岩波文庫、1977) コロンブスというのは狡猾なところとナイーブなところが共存している男だなと思った。表帳簿と裏帳簿のような記述で、その日に進んだ距離…

レファレンス オスラー名言集

ちょっとプライヴェートな話をする。しばらく前に梅毒についてのエントリーを書いたときに、「梅毒の疫学なんて不可能だ」という意味のオスラーの警句を引用したくなったけど、このメモを探すことができない。ウェッブで検索しても、同じオスラーの「梅毒を…

パリの売春婦と SAYURI

必要があってパラン=デュシャトレのパリの売春調査の抄訳に目を通す。アラン=コルバンが編集・解説をつけて15年前ほど前に出した重宝なものである。Parent-Duchatelet, Alexandre A.パラン=デュシャトレ『19世紀パリの売春』A.コルバン編・小杉隆芳訳(東…

ヴェニスの梅毒と魔女裁判

新着雑誌から。ルネッサンスのヴェニスにおいて魔女が呪いをかけて人を梅毒にしたという告発を検討した論文を読む。文献は、McGough, Laura J., “Demons, Nature, or God? Witchcraft Accusations and the French Disease in Early Modern Venice”, Bulletin…

クイズ!

新しい企画、医学史クイズ、です。 上の絵は1906年にイギリスのジョン・コリエという画家が描いたものですが、いったいどんなシーンを書いた絵でしょうか? それを踏まえて、タイトルをつけて下さいな。 これは、特に定まった正解がある訳ではないのですが。