Entries from 2012-09-01 to 1 month
松木明知「弘前藩士山崎半蔵と蝦夷地の壊血病」『津軽の文化誌 V- 幕末期の医学・医療事情』(弘前:津軽書房、2012), 242-258.弘前大学の麻酔科の教授であった松木明知は、優れた医学史の研究者であり、地元の東北や北海道を素材にした数多くの優れた仕事…
井村恒郎「戦争下の異常心理―戦争神経症を中心として」井村恒郎編『異常心理学講座5 社会心理学』(東京:みすず書房、1965), 351-397.古典的な論文の一つ。第二次世界大戦を中心に各国の戦争神経症についての研究から洞察を集めてまとめたもの。戦後の日本…
目黒克己「20年後の予後調査からみた戦争神経症」(第1報・第2報)『精神医学』8(12): 1966: 999-1007, 9(1): 1967: 39-42.欧米諸国は第一次大戦期に大規模な戦争神経症を経験していたが、日本ではこの経験は第二次大戦期にずれこんだ。国府台陸軍病院を中心…
「海軍の精神医療―黒丸正四郎先生に聞く」『精神医療』12(1982), 82-85.日本の軍隊の精神医学について、これまでその未発達を指摘する歴史学者が多かった。皇軍の兵士に精神病や神経症はありえなかったとする指摘である。たしかにあたっている部分はある。特…
石井厚「鎌田碩庵『婦人臓躁説』考」『精神医学』28(5); 1986, 583-588.「ヒステリー」という病名が「臓躁」と訳されていた時期がある。「臓躁」は、中国医学では由緒正しい由来を持つ病名で、『金匱要略』に「婦人臓躁」として登場する病名であるから、これ…
ピーター・ブラウン『古代から中世へ』後藤篤子訳(東京:山川書店、2006)「貧困とリーダーシップ」27-70; 「『中心と周縁』再考」 71-94; 「栄光につつまれた死」95-133.以前にも触れたことがあるが、ピーター・ブラウンは私のヒーローの一人である。古代…
櫻井図南男「事態神経症の発病機序に就いて」『福岡医学雑誌』37(1943), 577-584.下田光造の弟子で戦争中は戦争神経症の研究を発展させ、後に九大の教授となった櫻井図南男の論文の一つ。クレペリンから呉秀三が持ち込んだ一つの柱が脳の病理解剖であり、呉…
石山福二郎・下田光造「精神分裂病其他に於ける前頭脳切除手術の結果に就いて」『九大医報』17:4(1943), 80-82.九州帝大は新潟とならんで戦前にロボトミーを行ったことで知られている。ロボトミーは1936年と言うから昭和11年にモーニッツが始めた方法で、こ…
Cook, Harold J., “Physick and Natural History in Seventeenth-Century England”, Peter Barker and Roger Ariew eds., Revolution and Continuity: Essays in the History and Philosophy of Early Modern Science (Berkeley: University of California P…
Park, Katharine and John Henderson, “’The First Hospital among Christians’: The Ospedale di Santa Maria Nuova in Early Sixteenth Century Florence”, Medical History, 1991, 35: 164-188.イタリアの病院はヨーロッパでも著名であって、宗教改革のル…
Bynum, William, The History of Medicine: A Very Short Introduction (Oxford: University of Oxford Press, 2008)ウェルカム医学史研究所の黄金時代に所長を務めていたビル・バイナムが語る西洋医学の短い通史である。ヒポクラテスから現代まで扱っている…
Evans, Bonnie and Edgar Jones, “Organ Extracts and the Development of Psychiatry: Hormonal Treatments at the Maudsley Hospital 1923-1938”, Journal of the History of the Behavioral Sciences, 48(3), 251-276 Summer 2012.20世紀の前半にはホルモ…
芥川龍之介「子供の病気」『芥川龍之介全集 第10巻』(東京:岩波書店、1996)107-116.1923年に初出、次男多加志(当時2つ)が下痢の病気で入院したときの様子を記している。冒頭は次男の洗腸と粘液を中心に物語が展開する。次男の調子が悪く、Sさんという医…
Brody, Howard, ハワード・ブローディ『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬』(東京:日本教文社、2004)プラシーボについて入門的な考えを知る必要があって、目についた書物を読んだ。とてもよい本だったと思う。20世紀の科学的な医学の上昇は、かえ…
Mark, Catherine and Jos? G. Rigau-P?rez, “The World First Immunization Campaign; The Spanish Smallpox Vaccine Expedition, 1803-1813”, Bulletin of the History of Medicine, 83(2009), 63-94.19世紀初頭にスペインが行った、中南米、フィリピン、中…
日本精神神経学会『三宅鉱一博士還暦記念論文集』(東京:日本精神神経学会、1938)日本の精神医学の歴史研究において、呉秀三とその問題意識に注意が向きすぎていると私は感じている。呉はもちろんクレペリンの精神医学を日本に導入し、日本の精神病院が発…
本多秀貫「診療談叢―深く注意し考えよ」『治療医学』no.512 (1942), 3.肺結核の病名告知についての意見。短い文章だが、いくつか重要なヒントがある。一つは、結核を「国民病」として性格付けて国家の問題にしたうえで、医師―患者関係が、個人的な契約から、…
住吉義級(すみよし・よしみつ)「妊産婦梅毒の罹病自覚程度」『臨床の皮膚泌尿とその境域』7の4, (1942), 238.近代国家においては病気の強制的な検査という仕組みがあった。本人は病気だと思っておらず、医療を求めてもいないのに、調査や検査などを通じて…
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Bliss, Michael, The Making of Modern Medicine: Turning Points in the Treatment of Disease (Chicago: University of Chicago Press, 2011).19世紀末から20世紀前半にかけて、アメリカ合衆国とカナダの医学研究が急速に進展する。北米地域は、それまで医…
Lindeboom, G.A., Herman Boerhaave: The Man and His Work, 2nd edition (Rotterdam: Erasmus Publishing, 2007).1530年代から40年代にかけてのパドヴァ大学は、医学教育・医学研究が革新的な変化を遂げて、パドヴァの卒業生によってヨーロッパの他の大学に…
Bylebyl, Jerome, “The School of Padua: Humanistic Medicine in the Sixteenth Century”, in Charles Webster ed., Health, Medicine, and Mortality in the Sixteenth Century (Cambrdige: Cambridge University Press, 1979), 335-370.16世紀のパドヴァ…
Siraisi, Nancy G., Medieval and Early Renaissance Medicine: An Introduction to Knowledge and Practice (Chicago: The University of Chicago Press, 1990), “Medical Education”医学教育の歴史についてまとめる必要があって、中世医学の歴史についての…
石川知福『随想』(東京:労働科学研究会、1951)石川知福(いしかわ・ともよし)は、暉峻義等らと並ぶ、日本の労働科学・産業衛生学の開拓者の一人である。愛媛県で生まれ、松山中学校・鹿児島の第七高等学校を経て東大医学部の生理学を学ぶ。勤務は倉敷労…
楠本正康『こやしと便所の生活史―自然とのかかわりで生きてきた日本民族』(東京:土牝出版、1981)著者は新潟医科大学を卒業し、厚生省の衛生関係の仕事をしてきた衛生技官である。中世以来、人糞やし尿は農業用の肥料として用いられてきた一方で、明治以降…
北一輝『霊告日記』松本健一編(東京:第三文明社、1987)精神医学の歴史を研究しているとか偉そうなことを言いながら、北一輝『霊告日記』という超重要な資料の存在を知らなかったのは世界中で私だけだろう。自分の無知を心から恥じる。これは、北一輝が昭…
阿部良男「本邦人に於ける混合精神病の研究―混合精神病の臨床像」『神経性神学雑誌』48(1944), 135-171;阿部良男「本邦人に於ける混合精神病の研究―混合精神病の構成、特にその遺伝病理学に就いて」『神経性神学雑誌』48(1944), 172-205.阿部良男は内村祐之…
Benedek, Thomas G., “Vaccination-Induced Syphilis and the Huebner Malpractice Litigation”, Perspectives in Biology and Medicine, 55(2012), no.1, 92-113.1853-54年にかけてバヴァリアの法廷で争われた「ヒューブナー医師の事件」を分析した論文であ…
堀見太郎・江川昌一・杉原方「南方熱帯圏に於ける精神病」『大阪医事新誌』13(1942), no.9, 914-919.これは、大阪帝国大学の系列の比較民族精神医学の試みである。まだ詳しいことは調べていないが、この論文は、堀見太郎が後に阪大精神科の教授となるが、現…
山下實六「比島の精神病に関する一報告」『精神神経学雑誌』47(1943), 336-340.内村のアイヌ論文とともに、日本の精神医学が「帝国精神医学」と、それにともなう比較民族精神医学を志向する時代が始まったことを示す論文。山下實六は九大の下田門下の精神医…