梅毒と強制採血検査の結果(1942年)

住吉義級(すみよし・よしみつ)「妊産婦梅毒の罹病自覚程度」『臨床の皮膚泌尿とその境域』7の4, (1942), 238.

近代国家においては病気の強制的な検査という仕組みがあった。本人は病気だと思っておらず、医療を求めてもいないのに、調査や検査などを通じて、ある病気に罹っていることが発見されるという仕組みである。 

著者は福岡県立桜町病院の医師。最近、当地の妊産婦全部に施行された強制的採血検査の結果、血清反応陽性を呈したものに通告を発して治療を強制した。そのときに当院に来診した69名につき、自己の罹病を認識していたかどうか、自覚したものは受療していたかを調べた。69名のうち、罹病を認識していたものは16名、残余の53名は全く自覚せず、甚だしきは、血清反応の成績に疑惑を持ち、抗議的申し出をしたものすらいた。

このパターンは別の検査においても同じであった。慶應大学の婦人科外来で、100名の血清反応陽性のものに検査をし、自覚していたもの13名、夫が罹患しているのを知っていたもの13名、夫が罹患しているから自分も罹患していると疑っていたもの3,4名、残りの53名は全然否定した。この調査についても、認識していなかったどころか、強く否定しており、再度の血液検査でようやく納得した。自覚していたものも、不完全治療で、その一部は治療を全く受けていない。