Entries from 2008-08-01 to 1 month

明治日本の軍事衛生

新着雑誌から明治日本の軍事衛生についての論文を読む。文献は、Lee, Jong-Chan, “Hygienic Governance and Military Hygiene in the Making of Imperial Japan, 1868-1912”, Historia Scientiarum, 18(2008), 1-23. 中心的な話としては、長与専斎-後藤新平…

障害の歴史

必要があって、フランスの障害の歴史の大作を読み直す。文献は、Stiker, Henri-Jacques, A History of Disability, translated by William Sayers, foreword by David T. Mitchell (Ann Arbor: The University of Michigan Press, 1997).著者はフランスの偉…

ファウストとパラケルスス

必要があってユングのパラケルスス論を読む。文献はC.G. ユング『パラケルスス論』榎木真吉訳(東京:みすず書房、1992) 「医師としてのパラケルスス」と「精神現象としてのパラケルスス」という1940年代の二つの講演をもとにしたユングの論文を訳したもの…

アレクサンダー大王

空港の本屋で偶然買ったアレクサンダー大王伝を出張の飛行機の中で読む。文献は The Legendary Adeventure of Alexander the Great, trans. Richard Stoneman (London: Penguin, 2006). これは、Pengui Epics という20冊ほど刊行されているシリーズの中の一…

ゲーテ『ファウスト』

必要があってゲーテ『ファウスト』を読む。岩波文庫の古い訳の二巻本。私の記憶に間違いがなければ、この有名な作品を実際に読むのは生まれて初めてだと思う。私が知っている他のファウストに較べて、筋が複雑というか、スケールが大きなストーリーだった。…

レオナルドのスケッチ

出張の合間の休日の一日、ロンドンでレオナルドのスケッチを見られる展示があることに気付いて、あわてて見に行く。Amazing Rare Things というタイトルで、英国王室が所有する自然誌関係の絵画やスケッチなどをバッキンガム宮殿のギャラリーで見せるという…

ケルトの神話

未読山の中からケルト神話の入門書を読む。文献は、井村君江『ケルトの神話 女神と英雄と妖精と』(東京:ちくま文庫、1990) アイルランドを中心に保存されているケルト神話を紹介する本。色々な神話エピソードの紹介と解説が中心だけれども、章によってか…

インド神話

未読山の中から、インド神話の入門書を読む。文献は、上村勝彦『インド神話―マハーバーラタの神々』(東京:ちくま学芸文庫、2003)1981年に初版が出た書物で、当時はヒッピーと比較神話学のようなものの全盛期で、きっといい加減なインド神話の紹介がたくさ…

古代エジプトの病気

未読山の中から、古代エジプトの病気についての書物を読む。文献は、ジョイス・ファイラー『病と風土 古代の慢性病・疫病と日常生活』内田杉彦訳(東京:学芸書林、1999) 私の勘違いでなければ、これは大英博物館のミュージアム・ショップで売っていた古代…

『カンフー・パンダ』

出張の飛行機の中で、映画『カンフー・パンダ』を観る。ラーメン屋の息子で、家業を継ぐことになっているが、カンフーの大ファンでなかなか家業に身が入らないパンダが、何かの拍子にカンフーの英雄「龍の戦士」に選ばれてしまい、フェネックギツネのような…

行ったことがない場所

今日は無駄話を少し。『ライラの冒険』の中で、何か納得してしまうたとえがあったので。 「恋をするなんて、中国のようなものだって思っていた。つまり、そこにあるとわかっていて、きっととても面白くて、そこに行く人もいるけれども、わたしはけっして行か…

『ライラの冒険 III  琥珀の望遠鏡』

『ライラの冒険』の三部作の締めにあたる『琥珀の望遠鏡』。少年と少女の愛は成就し、世界は救われ、服従を強制する悪の秩序は打ち倒され、新しい自由な道徳の体制が現れてハッピーエンド。第三部の中心に据えられている概念は、第一部からずっと出てきたけ…

『ライラの冒険 II 神秘の短剣』

未読山にフィリップ・パルマンの『ライラの冒険』の第二部、第三部があることが気付いて、出張の移動時間に読む。 第二部『神秘の短剣』も、第一巻『黄金の羅針盤』と同じく上下二巻で、大久保寛の翻訳が新潮文庫から出ている。前の『黄金の羅針盤』は、「ダ…

感染症のレファレンス

感染症のレファレンスが届いたので、どんな使い方ができるかと思って目を通す。文献は、Brenda Wilmoth Lerner and K. Lee Lerner, Infectious Diseases in Context 2 vols. (Farmington Hills, MI.: The Gale Group, 2008) 感染症の病気の名前と、それ以外…

清潔とイタリア・ルネッサンス

未読山の中から、イタリア・ルネッサンスの清潔の文化史を読む。文献は、Biow, Douglas, The Culture of Cleanliness in Renaissance Italy (Ithaca: Cornell University Press, 2006).文学資料に基づいた文化史で、とても読みやすい優れた研究に仕上がって…

日本のインシュリン昏睡療法

必要があって、昭和戦前期の精神分裂病(現在の言葉でいう統合失調症)に対するインシュリン昏睡療法の長中期効果を研究した論文を読む。文献は、林章・秋元波留夫「精神分裂病の予後及び治療」『精神神経学雑誌』43(1939), 705-742. (林章の章は、日へんに…

戦前朝鮮のモルヒネ依存症

必要があって、戦前朝鮮のモルヒネ中毒について調べた当時の論文を読む。文献は、久保喜代二「もるひね中毒」『精神神経学雑誌』40(1936), 661-697.京城帝国大学の教授であった久保喜代二が、昭和11年に第35回日本精神神経学会の「宿題報告」として行ったも…

電気痙攣療法の歴史

必要があって、精神医療の電気痙攣療法の歴史の研究書を読む。文献は、Shorter, Edward and David Healy, Shock Therapy: a History of Electroconvulsive Treatment in Mental Illness (New Brunswick, NJ: Rutgers University Press, 2007) ショーターとヒ…

薬物依存症の歴史

必要があって、女性に焦点を当てたアメリカの薬物依存症の歴史の研究書を読む。文献は、Kandall, Stephen, Substance and Shadow: Women and Addiction in the United States, (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1996). 著者は薬物依存症の治療…

『カーマ・スートラ』の誕生

未読山の中から、『カーマ・スートラ』が1883年に出版されるまでの経緯を描いた書物を読む。文献は、McConnacie, James, The Book of Love: the Story of the Kamasutra (New York: Metropolitan Books, 2007). 学術書と一般向けの書物の中間くらいのジャン…

パラケルスス選集

必要があって、パラケルススの選集を読む。文献は、パラケルスス『自然の光』J. ヤコビ編・大橋博司訳(京都:人文書院、1984)この書物の序言は、編者のヤコビの「いかなる『選集』も一つの冒険だ」という気負った言葉、あるいは「きざ」と形容してもいい台…

ルネッサンスの科学

必要があって、ルネッサンスの科学史についての古典的な教科書を読む。文献は、A.G. ディーバス『ルネッサンスの自然観』伊東俊太郎・村上陽一郎・橋本真理子訳(東京:サイエンス社、1986)科学史、特にパラケルスス派の化学についての碩学が書いた16・17世…

含羞の病理化

必要があって、含羞 (shyness)の病理化についての研究書を読む。文献は、Christopher, Shyness: How Normal Behaviour Became a Sickness (New Haven: Yale University Press, 2007)1980年代のアメリカで、かつては「シャイ」と呼ばれて好意的にすら受け止め…

『西洋医学の没落』

必要があって、ルネ・アランヂー『西洋医学の没落』(東京:先進社、1931) を読む。桜沢如一が訳していて、中山忠直が「跋」を書いている。桜沢はマクロビオティックの食養生から「無双原理」という宇宙論の唱道者になり、中山は漢方医学のプロモーションだ…

精神病患者の社会復帰

必要があって、精神病患者の社会復帰と作業療法についての本を読む。文献は、浅野弘毅『精神医療論争史 わが国における「社会復帰」論争批判』(東京:批評社、2000)精神科医が書く「歴史」の例に漏れず、章によって出来不出来の差が激しい。自分が実際に経…

心理療法のつゆはらいとしての電気ショック

必要があって、イギリスの身体的精神医学の大物の本を読む。文献は、Sargant, William, Battle for the Mind: the Mechanics of Indoctrination, Brain Washing and Thought Control (London: Pan Books, 1957).ウィリアム・サージェント(William Sargent, …

大杉栄のマスターベーション

必要があって、20世紀前半の日本における神経衰弱を論じた論文を読む。Fruestueck, Sabine, “Male Anxieties: Nerve Force, Nation, and the Power of Sexual Knowledge”, in Morris Law ed., Building a Modern Japan: Science, Technology, and Medicine i…

症状と文化のループ効果

必要があって、文化精神医学の論文を読む。文献は、Kirmayer, Laurence and Norman Sartorius, “Cultural Models and Somatic Syndromes”, Psychosomatic Medicine, 69(2007), 832-840; Kirmayer, Laurence, “Culture and the Metaphoric Mediation of Pain”…

バリの精神分裂病

必要があって、東京とインドネシアのバリの精神分裂病を比較した一連の研究を読む。文献は、Kurihara, T. et.al., “Outcome of Schizophrenia in a Non-Indurstiralized Society: Comparative Study between Bali and Tokyo”, Acta Psychiatrica Scandinavic…

錬金術と化学

必要があって、錬金術と化学の歴史を一般向けに解説した書物を読む。文献は、Moran, Bruce T., Distilling Knowledge: Alchemy, Chemistry, and the Scientific Revolution (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 2005). 一般向けの本ということもあ…