古代エジプトの病気

未読山の中から、古代エジプトの病気についての書物を読む。文献は、ジョイス・ファイラー『病と風土 古代の慢性病・疫病と日常生活』内田杉彦訳(東京:学芸書林、1999) 私の勘違いでなければ、これは大英博物館のミュージアム・ショップで売っていた古代の文明のパンフレットのようなシリーズのうち一冊を訳したもの。エジプト学は日本でブームなんだなと実感する。

日本は古い人骨が残りにくい気候と土質だそうで、古病理学の仕事はハンディキャップがある。それに比べてエジプトは、人骨は言うまでもなく、やはり何と言っても非常に多数のミイラがあるということで、他の古代文明の病気の研究と比べても大きな研究上のメリットを持っている。たとえばマラリアや住血吸虫症などの病理的な影響が肝臓や脾臓に現れているそうだ。しかし、このミイラの軟組織に残された証拠の解釈というのも、それはそれで難しい問題があるらしい。 また、小人症というのか、軟骨形成不全というのか、この先天性の疾患については、絵画や彫刻の資料もあわせて論じていて、面白かった。 ただ、ここから単なる興味だけでなく、重要な洞察を引き出す方法となると、ちょっと分からない。