Entries from 2011-11-01 to 1 month
貝原益軒『養生訓・和俗童子訓』石川謙校訂(東京:岩波文庫、1961)風邪をひいて、久しぶりに寝込んだので、回復期に『養生訓』の冒頭の章を読んでみた。アナクロニスティックな言い方だけれども、『養生訓』は、身体と健康の自己決定権という考え方と対極…
風邪で病院にいっていただいたお薬で、咳止めのシロップ状のものがあった。OTCでも処方薬でも咳止めといえばトローチだと思っていたので、液体状の咳止めというのがレトロな感じで、医学史家としてはなんとなく嬉しかった。頂いた明細書を見ると、その液体は…
Riley, James C., Rising Life Expectancy: A Global History (Cambridge: Cambridge University Press, 2001) 疾病への罹患や致死率や健康状態などが、一般的に言って、社会経済状態に反応して変化すること、つまり貧困な人間は総じて不健康であって病気に…
村松常雄「東京市内浮浪者及び乞食の精神医学的調査」『精神神経学雑誌』46(1942), 69-92.これは内村の系列の精神病者一斉調査とはまったく違う哲学に基づいて行われた調査である。思想としては、大正期の呉秀三のものであるように思う。この程度の調査が実…
秋元波留夫・島崎敏樹・岡田敬蔵・は名城政順「地方小都市に於ける民勢学的及び精神医学的調査」『精神神経学雑誌』47(1943), 351-374.八丈島、三宅島、池袋に続いて、地方の中都市を選んで行った精神病調査。長野県の小諸をえらび、人口の約40%の5207名を…
岡田敬蔵、ハ名城政順・浅井利勇・詫摩武元・森村茂樹・坪井文雄「大都市に於ける精神疾患頻度に関する調査」『精神神経学雑誌』46(1942), 204-218.八丈島、三宅島で精神病の一斉調査を行った。これらは、四囲より隔離されているので観察しやすく、狭隘な地…
萩尾了・長尾茂「近親婚地域の精神的遺伝負荷の研究 第一回兵庫県家島群島の調査(1)」『精神神経学雑誌』47(1943), 529-536.著者は厚生科学研究所。これは、精神的遺伝負荷の地域的差異に関する研究の第一着手として、昭和17年7月に施行した調査成果の一部で…
十字架像を使って何かを言う必要があって、同僚に頂いた Phaidon から出ている Crucifixion という十字架の磔刑像の傑作集の素敵な本を見ながら、どの画像を使おうか考える、楽しい時間を少し過ごした。私が一番好きなのはプラドで観たベラスケスの作品で、…
内村祐之「日本人の精神疾患負因負荷に関する一規準」『精神神経学雑誌』47(1943), 271-273.日本の精神病調査はドイツよりも10年ほど遅く始まり、始まった段階においても精神病院の患者数が絶対的に少ないという特徴を持っていた。内村の調査は確かにナチス…
太田清之「穿試法に依る秋田県の精神病調査」『精神神経学雑誌』47(1942), 319-328.S16年5月から8月にいたる三か月間、秋田市の一般病院、私立小泉病院に入院中の患者のうち中年者を発端者としてえらび、その200組の同胞1156人につき、精神疾患に関する詳細…
玻名城政順「本邦人の精神疾患遺伝負荷に関する調査―342名の東京市並びに那覇市内科病院入院患者の同胞及び両親」『精神神経学雑誌』47(1943), 282-307. この論文にも記されているが、玻名城政順は、「立津」と改姓した。のちに、熊本大学の神経学者として水…
Kondo, Kiyotaro, “Inherited Neurological Diseases in Island Isolates in Southern Japan”, in D.F. Roberts, N. Fujiki and T. Torizuoka eds., Isolation, migration, and health : 33rd symposium volume of the Society for the Study of Human Biolo…
内村祐之・秋元波留夫・菅修・阿部良男・高橋角次郎・猪瀬正・島崎敏樹・小川信男「東京府八丈島住民の比較精神医学的並びに遺伝病理学的研究」『精神神経学雑誌』44(1940), 745-782.さまざまな意味でとても面白い論文。1930年代からドイツを中心に行われる…
日本精神病医協会『日本精神病医協会記事』小峰和茂編(東京:小峰研究所、1974).大正9年に呉秀三を中心にして作られ、昭和10年まで活動していた「日本精神病医協会」という団体がある。精神病を専門とする医者が会員となり、精神病に関する制度を研究する…
青木延春「私宅監置の実情に就いて」『精神神経学雑誌』41(1937), 1085-96.1918年に出版された呉秀三らの有名な私宅監置の実情報告から約20年が経過して、日本の精神医療の状況や医師たちの考え方も変わってきた。国際的にも、精神病院という制度に対する信…
斎藤光政『偽書<東日流外三郡誌>事件』(東京:新人物往来社、2009)アマゾンで津波の歴史の本を買った時に、たまたま「おすすめ」で出会った本。こういう買い方をする本が成功することは珍しいが、この本は気楽に読めて抜群に面白かった。<東日流外三郡…
陣内秀信、法政大学・東京のまち研究会『江戸東京のみかた調べ方』(東京:鹿島出版会、1989)必要があって、東京学の本を読む。私が学生時代に東京や都市をテキストとして読むというようなことが流行していたけれども、その頃の空気を感じる。前田愛や中村…
識名章喜「ドレスデンに<温泉>はあったのか?―E.T.A. ホフマン『黄金の壺』の<リンケ温泉>について―」『慶應義塾大学日吉紀要 ドイツ語学・文学』no.47(2011), 99-133.識名章喜「入浴観の違いから生じる誤解――E.T.A. ホフマン『黄金の壺』の<リンケ温泉…
原胤昭「社会の厄介者である累犯者」『国家医学会雑誌』1909. No.264, 173-185.著者の原胤昭は、江戸町与力の家に生まれ、明治維新以後キリスト教に改宗し、出獄人を保護する事業をしたいわゆる社会事業家として有名である。これは国家医学会での講演を原稿…
野口悠紀雄『続「超」整理法・時間編―タイム・マネジメントの新技法』(東京:中公新書、1995)「超整理法」で有名な元官僚で経済学者の本である。たぶん、オリジナルの『超整理法』と一緒に買ったのだろう。オリジナルは読んだが、理由はよく覚えていないけ…
Harris, Ruth, Lourdes: Body and Spirit in the Secular Age (London: Penguin Books, 1999).必要があって、ルース・ハリスによるフランスの巡礼地「ルルド」の研究を読む。ハリスによる19世紀フランスの司法精神医学の歴史を殺人事件から調べた著作は、『…
Wootton, David, “Traffic of the mind: review of Robert Westman, The Copernican Question and Steven Shapin and Simon Schaffer, Leviathan and the Air-Pump, new edition.” Times Literary Supplement, Oct 21 2011.今日はどちらかというと無駄話。学…
Rice, Margery Spring, Working-Class Wives: Their Health and Conditions (Harmondsworth: Penguin Books, 1939)労働者階級の女性の健康を高める運動家たちが中心になって1930年代にイギリスで行われた健康調査の報告書を読む。イギリス各地でインタヴュー…
少し空いた時間があったので、写経をしたり、ペンギン版のアーユルヴェーダをめくったりしてのんびりした。「遺伝について」という節は、人間の発生はどのようなものであるかをめぐる節だが、面白い形式をとっていて、師が説を述べ、弟子がそれに反対し、師…
山中浩司『医師と回転器―19世紀精神医療の社会史』(京都:昭和堂、2011)必要があって、19世紀初頭ドイツの精神医療の歴史社会学研究を読む。仕上げの粗さが目につく書物で、たとえば「結論」がないというような大きな欠陥もあるが、全体としては、新しい視…
山下麻衣「福原有信 1848-1924」宮本又郎編『日本をつくった企業家』(東京:新書館、2002)39-46.「資生堂」の創業者の福原有信は、1848年に安房国松岡村(現千葉県館山市)で生まれた。生家は漢方医の家であるが、江戸に遊学した折に、西洋薬剤に触れて、…
アレクシス・カレル『人間―この未知なるもの』渡部昇一訳(東京:三笠書房、2007)必要があって、フランス生まれでアメリカで活躍した医者・生理学者のアレキシス・カレルの著作を読む。もともと優れた科学者で、ノーベル賞も受賞し、大西洋横断のパイロット…
Human Motor の Anson Rabinbach をまとめた。「地球が宇宙の中心ではなくなったこと」「人間が万物の霊長ではなくなったこと」「人間の意識が人間の自己に君臨するものではなくなったこと」の歴史的な現象を三つの断絶といい、人間がかつての絶対性を失って…
Allan Brandt, "Behaviour, Disease and Health in Twentieth-Century United States", in Allan Brandt and Paul Rozin eds., Morality and Health (London: Routledge, 1997). 必要があって、アラン・ブラントの病気と道徳論を読む。誰が・なぜ・病気にな…
Rey, Roselyne, The History of Pain, translated by Louise Elliot Wallace, J.A. Cadden, and S.W. Cadden (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1995).ロゼリン・レイの『痛みの歴史』から、モグサと痛みについての議論、1847-8年の麻酔革命の…