陣内秀信、法政大学・東京のまち研究会『江戸東京のみかた調べ方』(東京:鹿島出版会、1989)
必要があって、東京学の本を読む。私が学生時代に東京や都市をテキストとして読むというようなことが流行していたけれども、その頃の空気を感じる。前田愛や中村雄二郎などが「生きられた空間としての都市」というフレーズを作ったそうだ。私がいま調べているのは、「人々が死ぬ空間としての都市」で、まあもともと暗い話ではあるけれども、この書物にもあふれている、「江戸・東京って素晴らしい!エキサイティング!」という雰囲気とはかなり違った話になるだろう。
必要があって、東京学の本を読む。私が学生時代に東京や都市をテキストとして読むというようなことが流行していたけれども、その頃の空気を感じる。前田愛や中村雄二郎などが「生きられた空間としての都市」というフレーズを作ったそうだ。私がいま調べているのは、「人々が死ぬ空間としての都市」で、まあもともと暗い話ではあるけれども、この書物にもあふれている、「江戸・東京って素晴らしい!エキサイティング!」という雰囲気とはかなり違った話になるだろう。
東京・大阪をはじめとする主要な都市の歴史的な視点からのフィールド調査は行われていなかった。プレ江戸期は、地形を読み込んで町の原初形態をつくるプロセス、お寺、お宮のかなりの部分が徳川入府以前につくられていた。ヴェネツィア、ブリュージュ、アムス、蘇州のように、河川と掘割で組み立てられる水の都、宗教施設の多くが水辺におかれ、場所に聖なる領域をつくった。それとともに、名所として人をひきつけ、境内や門前に盛り場を生み出し、庶民にとっての解放的な空間となった。