Entries from 2011-02-01 to 1 month
岩波の『日本思想大系』が値崩れしている。一冊500円たらずでアマゾンに出ていて、必要に応じて自分で買っている。もともとは、日本の科学・医学についてのマテリアルを手元におきたいためである。しばらく作っていた「医学史方法論」の大学院水準の授業は、…
東京の国立博物館で、「仏教伝来の道 平山郁夫と文化財保護」という展覧会を観てきた。平山郁夫の作品を見せると同時に、平山郁夫の創作にゆかりが深い事物を集めて見せるという構成になっている。これはとても野心的な構成であって、現在の創作者の作品と、…
有名なオクスフォードの婉曲語法辞典をちょっと読む。Oxford Dictionary of Euphemisms. R. W. Holder という人物が編集した、個人的な味があって読んで楽しい婉曲語法辞典。私が好きなAlan Davidson のCompanion to Food と同じ傾向の本のつくりである。「…
未読山の中から、20世紀後半のアメリカ南部における病院の人種差別撤廃の構造を検討した論文を読む。文献は、Pohl, Lynn Marie, “Long Waits, Small Spaces, and Compassionate Care: Memories of Race and Medicine in a Mid-Twentieth-Century Century Sou…
必要があって、後期近世の藩による医療を分析した論文を読む。文献は、海原亮「近世後期藩領における<医療>の展開―越前国府中を例として―」『史学雑誌』112(2003), 1811-1837.近世の医療は村や共同体などの地域をベースにして作られたものである。それぞれ…
必要があって、日本のHIV/AIDSについて論じた論文を読む。文献は、Runestad, Pamela, “What People Think Matters: the Relationship between Perceptions and Epidemiology in the Japanese HIV Epidemic”, The International Journal of Interdisciplinary…
必要があって、精神病院のヒストリオグラフィの「新しい潮流」を示唆した古典的な論文の一つを読みなおす。文献は、Finnane, Mark, “Asylums, Families and the State”, History Workshop Journal, 20(1985), 134-148.私の学生・院生時代は、Past and Presen…
必要があって、藤野恒三郎『日本細菌学史』をチェックする。同書は、日本の細菌学の歴史について不可欠なレファレンスである。昨日の記事では細菌の変異を理解する枠組みがあったかどうかという問題を取り扱ったが、その中に日本のいわゆる竹内菌論争を位置…
しばらく前に書いた記事について、舌足らずであるという批判を受け、また、重要な質問を受けたので、しばらくしたらそれらにこたえる記事を書きなおそうと思っている。そのための準備も兼ねて、関連する論文を一本読んだ。文献は、Amsterdamska, Olga, “Medi…
必要があって、疫学の古典の論文を読む。文献は、Rose, Geoffrey, “Sick Individuals and Sick Populations”, International Journal of Epidemiology, 30(2001), 427-432.疫学的な研究のうち、医者の伝統的な役割によりなじむのは、ある個人の症例について…
必要があって、『ジキル博士とハイド氏』『宝島』で有名なスティーヴンソンの短編『死体泥棒』を読む。 ウェブ上にいくつもフルテキストが掲載されている。私は以下のサイトから入手した。http://gaslight.mtroyal.ca/body.htm『死体泥棒』は1881年に書かれ…
同じく、このフランスの実力者の論文。文献は、Henckes, Nicolas, “Reshaping Chronicity: Neuroleptics and the Changing Meaning of Therapy in French Psychiatry, 1950-1975”, forthcoming in Studies in History and Philosophy of Biological and Biom…
必要があって、戦後のフランスの精神医療の展開とWHOの委員会の関係を論じた論文を読む。Henckes, Nicolas, “Narratives of Change and Reform Processes: Global and Local Transactions in French Psychiatric Hospital Reform after the Second World War…
必要があって、中世から近世の「奇矯な行動」の医学的な解釈を読む。文献は、Hecker, Justus Friedrich Carl, The Epidemics of the Middle Ages, translated by Benjamin Guy Babington (London: Truebner & Co., 1859).著者は黒死病の研究で有名な19世紀ド…
3月17日・20日に、ミシガン大学 ジョナサン・メッツル先生を慶應義塾大学にお招きして、医学史・医療人類学の講演(17日)シンポジウム(20日)を行います。1.慶應人文GCOE・医療史研究会合同シンポジウムのお知らせです。2011年3月17日(木)17:00…
必要があって、昭和10年のヒステリー性夢遊状態の記事を読む。文献は、北村潔「興味ある<ヒステリー>の二症例」『今村教授還暦祝賀記念論文集』(京都:京都帝国大学医学部精神病学教室、1935), 394-398.京都帝国大学の今村新吉の研究室からの報告。外傷…
無駄話。たまたま雑誌で、ずっと気になっていた画家の作品の展示がミュンヘンで開かれていることを知る。19世紀の医学や科学の歴史の本でよく使われている図像であり、私が最初に見たのはL. Jordanova の Sexual Visions で使われているイラストだった。(同…
必要があって、近世フランスとヨーロッパの両性具有を論じた文化史に目を通す。文献は、Long, Kathleen P., Hermaphrodites in Renaissance Europe (Aldershot: Ashgate, 2006)ヨーロッパの両性具有は、1980年代から90年代にかけて学問の問題として離陸した…
必要があって、明治の浮世絵師、月岡芳年についての本を眺める。文献は、『月岡芳年五十年忌記念展覧会目録』(慶応義塾、1941); 高橋誠一郎監修・瀬木慎一編集『最後の浮世絵師-最初の劇画家 月岡芳年の全貌展』(東京:西武美術館、1977); 横尾忠則編『…
作家の宇野浩二は精神病にかかり、昭和2年の夏に二カ月余りにわたって東京・滝野川の小峯病院に入院した。水上勉『宇野浩二伝』(東京:中央公論社、1973)429-510. から、その模様をまとめる。 宇野浩二は作家としてデビューして以来、人生に追い立てられる…
必要があって、国民優生法と戦前の精神医学についての論考を読み直す。文献は、永井順子「戦争と優生の時代における精神病者」芹沢一也編『時代が作る「狂気」』(東京:朝日新聞社、2007), 111-141. 「精神医学者によらない精神医学史」をかかげて編集され…
必要があって、日本の梅毒についての書物を読む。文献は、苅谷春郎『江戸の性病』(東京:三一書房、1993)エピソード的な医学史に少し膨らみを与えた書物である。一次資料はともかく、二次資料や研究文献も、日本語文献と日本語訳がある医学史系の文献だけ…
今日は無駄話。三省堂から新しくでた辞典。日本語の文章がうまく書けないことを長いこと実感しているし、最近ネット上などで話題になったから、買ってみた。話題になったものを買ってうまくいくことは少ないけれども、この『てにをは辞典』は、本当に使える…
招待券をもらったので、六本木の森美術館で『小谷元彦展―幽体の知覚』を観る。「幽体」と訳されているのは、phantom limb のことで、たとえば切断した足がそこにまだあるように感じる、そこに痛みすら感じるかのような不思議な現象である。誰も興味がないと…
昭和戦前期の学術総合誌『東洋学芸雑誌』のDVD復刻が出て、プロモーションされたので買ってみた。つくりは単純で、画像をおさめて著者名とジャンルで検索できるようになっている。全文検索などができればいいんだけれども、まあ、それはないものねだりかもし…
必要があって、アスクレピオス信仰についての書物をチェックする。文献は、 Wickkiser, Bronwen, Asklepios, Medicine, and the Politics of Healing in Fifth-Centiru Greece (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2008).病人が神殿に詣でて、…
必要があって、20世紀初頭の「性と現代文明」について論じた書物を読む。文献は、Bloch, Iwan, The Sexual Life of Our Time: In Its Relations to Modern Civilization, translated by M. Eden Paul (London: Rebman Limited, 1909). イヴァン・ブロッホ(1…
今日は無駄話。 趣味と言うほどではないが、私は野鳥を見る。野鳥の会の探鳥会に出たり、双眼鏡をのぞいてはフィールドガイドと見較べたり、庭の木に巣箱を掛けたり、鳥に関する自然誌の本を熱心に読む。外国に旅行したときでも、電車の窓から鳥がいる風景を…