Entries from 2008-12-01 to 1 month

ヨーロッパ科学史―中世まで

必要があって、近代以前のヨーロッパ科学史の標準的な教科書を読む。文献は、Lindberg, David C., The Beginnings of Western Science: the European Scientific Tradition in Philosophical, Religious, and Institutional Context, Prehistory to A.D. 145…

初期近代ヨーロッパ医学史

必要があって、初期近代のヨーロッパの医学・医療の歴史の概説書を読む。文献は、Lindeman, Mary, Medicine and Society in Early Modern Europe (Cambridge: Cambridge University Press, 1999). 1990年代から2000年代の初頭にかけて、それまでの20年間で研…

16世紀ヨーロッパ

必要があって、ヨーロッパ史の教科書を読む。文献は、Cameron, Euan, The Sixteenth Century (Oxford: Oxford University Press, 2006).「経済」「社会」「宗教」「思想」「対外発展」などの色々な主題の専門家が集まって書いた書物で、その出来には若干のム…

革命期パリの自殺死体たち

未読山の中から、革命期パリの変死死体の記録を分析した書物を読む。文献は、Cobb, Richard, Death in Paris: the Records of the Basse-Geôle de la Seine October 1795 – September 1801 Vendemiaire year IV – Fructidor year IX (Oxford: Oxford Univers…

ルバーブ(ダイオウ)の歴史

必要があって、薬用ルバーブの歴史を論じた書物を読む。文献は、Foust, Clifford M., Rhubarb: the Wondrous Drug (Princeton, NJ.: Princeton University Press, 1992). あまり知られていない書物かもしれないけれども、薬用植物のグローバライゼーションの…

パリ大学とパラケルスス主義

必要があって、初期近代フランスの医学史についてのスタンダードな教科書を読む。文献は、Brockliss, Laurence and Colin Jones, The Medical World of Early Modern France (Oxford: Oxford University Press, 1997). 二人の専門家が共著で書いた、1500年か…

発展途上国の治験とプラセボ

未読山の中から、最近の臨床試験や治験が発展途上国の患者を実験台にして行われていることを告発した書物を読む。文献は、Shah, Sonia, The Body Hunters: Testing New Drugs on the World’s Poorest Patients (New York: The New Press, 2007). 著者はジャ…

ルネッサンスの本草学

未読山の中から、ルネッサンスの本草学についての論文を読む。文献は、Reed, Karen Meier, “Renaissance Humanism and Botany”, Annals of Science, 33(1976), 519-542. 30年前に書かれた論文だけれども、すごく分かりやすく、大切なことが書いている。古典…

江戸の下肥

未読山の中から、江戸の下肥についての記事を読む。文献は、岩淵令治「江戸の下肥の河岸について」『地方史研究』no.262(1996), 4-9. この論文は、「下掃除人」が河岸という積み出しの場の共同利用を核として仲間を形成し、特定の河岸を事実上占有し、「町」…

菅原道真の不眠症

今日は無駄話を。厳しい日程の仕事がいくつか終わって、珍しく、必要でもなかったし、未読山にあったわけでもない本を読む。大岡信の『名句 歌ごよみ 冬・新年』(角川文庫)。『折々の歌』をはじめ、大岡信の名歌の解説のおかげで、日本の古典と現代の詩歌に…

『欲望の植物誌』

必要があって、マイケル・ポラン『欲望の植物誌-人をあやつる四つの植物』(東京:八坂書房、2003)を読む。リンゴ、チューリップ、マリファナ、ジャガイモの四つの植物を取り上げて、「植物の視点から」人間の文化と歴史を描いた書物。「植物の視点から」…

『病が語る日本史』

必要があって、酒井シズ『病が語る日本史』(東京:講談社学術文庫、2008)を読む。古代から現代まで、日本の病気にまつわるエピソードをふんだんに使って一冊にまとめた書物。この業界の第一人者であるだけに、エピソードはどれも着実で的確なもので、読ん…

人造人間と試験管ベビーの伝統

昨日読んだニューマンの Promethean Ambitions の第四章は、久々に読む思想史の傑作であり、ページを繰るのがもどかしいほど興奮した記述だった。内容は、現在の生命倫理の一つの焦点である、人造人間と試験管ベビーは、少なくともその構想については、古典…

錬金術と「自然と人工」

必要があって、古代から中世・近代初期の錬金術思想を題材に、自然と人工の緊張関係の歴史を論じた研究書を読む。文献は、Newman, William R., Promethean Ambitions: Alchemy and the Quest to Perfect Nature (Chicago: The University of Chicago Press, …

『医心方の世界』

必要があって、昨日と同じ著者の『医心方の世界-古代の健康法をたずねて』を読む。人文書院から1993年に再刊されたもの。『医心方』は平安時代の鍼博士(ある種の宮廷医であったと私は想像している)であった丹波康頼が、中国・韓国の医書を渉猟して抜粋して…

「大同類聚方」

必要があって、古代の薬の集大成である「大同類聚方」を解説した書物を読む。文献は、槇佐知子『病から古代を解く-「大同類聚方」探索』(東京:新泉社、1992、改訂版2000)「大同類聚方」は、808年(大同三年)に、勅命によって安部真直・出雲広貞らが、全…

『ドン・ジョヴァンニ』

今日は無駄話。新国立劇場でモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』を観る。オペラは大体そうなのかもしれないけれども、この作品ほど解釈の幅があるものも少ないだろう。放蕩者の主人公、ドン・ジョヴァンニは「リベルタン」の英雄なのか、人間の愚かさの象…

『ファイト・クラブ』

必要があって、映画『ファイト・クラブ』を観る。1999年の作品で、デイヴィッド・フィンチャーの監督、出演はエドワード・ノートン(『超人ハルク』、ブラッド・ピット、ヘレナ=ボナム・カーターなど。以下の記述には盛大なネタばれがあります。大企業に就…

『ガチ☆ボーイ』

ここで説明するのは複雑すぎる事情があって(笑)、映画『ガチ☆ボーイ』を観る。2008年の作品で、小泉徳宏の監督、主演は佐藤隆太。交通事故の後遺症で高次脳機能障害になり、記憶する能力が損なわれ、眠るとその日の出来事をすべて忘れてしまうという障害を…

病気の歴史とは何か

同じく新着雑誌から、「病気の歴史」のポテンシャルを論じたエッセイ・レヴューを読む。文献は、Hardy, Anne, “A New Chapter in Medical History”, Journal of Interdisciplinary History, 39(2009), 349-360.昨今の医学史という学問において「病気の歴史」…

移民の食事とアイデンティティ生成

新着雑誌から、移民の食生活に関する面白い論文を読む。文献は、Orangen, Knut, “The Gastrodynamics of Displacement: Place-Making and Gustatory Identity in the Immigrants’ Midwest”, Journal of Interdisciplinary History, 39(2009), 323-348. 食事…

カリフォルニアのロボトミー

必要があって、カリフォルニアの州立精神病院における治療法、特に電気ショックとロボトミーについての研究書を読み直す。文献は、Braslow, Joel, Mental Ills and Bodily Cures: Psychiatric Treatment in the First Half of the Twentieth Century (Berkel…

アフリカの精神医学

昨日取り上げたヴォーンが、アフリカの精神医学を論じていたので、その章も読んでみる。 Curing Their Ills の第5章、”The Madman and the Medicine Men: Colonial Psychiatry and the Theory of Deculturation”, 100-128. イギリスの植民地であったニヤサラ…

アフリカの植民地医学

必要があって、アフリカの植民地医学の歴史研究に大きな影響を与えている書物を読む。文献は、Vaughan, Megan, Curing Their Ills: Cononial Power and African Illness (Oxford: Polity Press, 1991).私自身が、同業者を相手にした論文を書くときの対象地域…

鍾乳石と未開精神

必要があって、石についてのアンソロジーを読む。文献は、アンドレ・ブルトン他『書物の王国 12 鉱物』(東京:国書刊行会、1997) 『書物の王国』というのは、「架空の町」「夢」「美少年」といった主題を選んで、それに関する短い印象的な短編や短い評論な…

植民地精神医学の研究レヴュー

先日読んだフランス植民地の精神医学史研究が非常に優れていたので、同じ著者が書いた研究レヴューを読んでみた。文献は、Keller, Richard C., “Madness and Colonization: Psychiatry in the British and French Empires, 1800-1962”, Journal of Social Hi…

ネット上の古い医学テキスト

しばらく前に、ネット上で古い医学テキストは読めますかというようなご質問をいただいたので。いろいろなサイトがあると思いますが、一般論として、私はまずここに行ってみます。 ウェルカム図書館のサイトです。http://library.wellcome.ac.uk/図書館所蔵の…

アネット・メサンジェ展

現代美術の展覧会には時々行くけれども、画集やカタログを買う習慣がない。現代美術に偏見があるわけではなくて、主としてケチだからだと思う。歴史学者は、書かれている文字の数で文書の価値を直感的に判断する修正が染み付いていて、現代美術のカタログは…

シュレーバー回想録

前にも何回か記事にしたと思うけど、必要があって、シュレーバーの回想録を読み直す。文献は、D.P. シュレーバー『シュレーバー回想録』、尾川・金関訳、石澤誠一解題で平凡社ライブラリーから出ている。数日前にも似たようなことを書いたけれども、この20世…

フランス植民地の精神医学

必要があって、20世紀の北アフリカのフランス植民地の精神医療の歴史を研究した論文を読む。文献は、Keller, Richard C., “Taking Science to the Colonies: Psychiatric Innovation in France and North Africa”, in Sloan Mahone and Megan Vaughan eds., …