Entries from 2011-07-01 to 1 month
秦郁彦『病気の日本近代史―幕末から平成まで』(東京:文芸春秋社、2011)著者は、日本近現代史の領域、それも従軍慰安婦問題や教科書裁判などにかかわる論争の中心で活躍している歴史学者であり、私はこの著名な歴史学者が病気の歴史を研究していることを全…
山本俊一『増補 日本らい史』(東京:東京大学出版会、1993)山本俊一は、もともとは東大医学部の教授で、医学者としての業績もきっと優れたものだろうと想像するが、医学史の世界では、この『日本らい史』と『日本コレラ史』(1982)という二冊の大著で著名な…
古屋芳雄「農村人口の生物学的危機」『医事公論』no.1388(1939), 3.4, 605-606.昨日も書いたけれども、古屋芳雄は、厚生省の役人として、戦中の国民体力法や人口政策などに大きな影響力を持ち、保健衛生と人口を融合させた国策を実施した、きわめて重要な人…
古屋芳雄・舘稔『近代戦と体力人口』(東京:創元社、1944)古屋芳雄は戦時の人口政策のための研究の中心にいた人物である。単なる病気の治療や予防でなく、出生・死亡・体力・健康といった問題を軸に、日本とその帝国における人口の配置に関する発言を続け…
川畑愛義「国策上より見たる衛生施設と健康教育」『医海時報』no.2269(1938), 2.19, 350-351. 戦前期に、久野寧という名古屋(帝国)大学の生理学教授が、日本人の気候馴化の実験を行っていた。気候馴化というのは、気候が違った土地にいって、最初は体調が…
寺田秀男「保健婦制度に就て」『公衆衛生』59(1941), no.9, 528-533.戦前・戦時期に「人口」が政策のトップアジェンダになった件。「原題は如何に優秀なる民族であってもある程度の人口がなければ発言権の認められない時代である。従って人的資源の拡充が国…
昭和戦前期には、保健所が創設されるなど、地域の公衆衛生の再組織化が進んだ。そのときに、明治以来の組織である衛生組合を再活性化するアイデアも語られていた。大阪市の公衆衛生のエースであった藤原九十郎がそのようなことを考えている。文献は、藤原九…
Chatwin, Bruce, In Patagonia, with an introduction by Nicholas Shakespeare (London: Vintage, 2005)ベルリン出張の移動中の時間などに読んだ。それまでタイムズ日曜版の記者であった著者が、神隠し同然に姿をくらまして半年間パタゴニアを放浪した経験…
少し調べたことをまとめました。引用・参照はお控えください。文献は、松本晶子『高畠華宵 大正・昭和レトロビューティ』(東京:河出書房新社、2004);高畠華晃『画家の肖像―高畠華宵』(東京:沖積舎、1982)などです。華宵は宇和島の出身で父親は厳格な商…
ベルリンに住む友人と会って、AktionT4 の跡地に行ったという話をしたら、それなら面白い場所があると言われて、ヒトラーの地下壕の跡地に行った。ドイツの敗色が濃厚になり、ベルリンが空爆されるようになると、ヒトラーは地下壕を覆っているコンクリートを…
学会で空いた時間を利用して、ベルリンのペルガモン博物館に行ってきた。ハイライトを慌ただしく回っただけだけれども、なんて素晴らしい博物館なんだろう。近代の博物館は帝国主義と密接に関連しているが、この博物館も、ベルリン―ビザンティン―バクダード…
自分で考えたこと、調べたことを少しまとめてみます。これまでリサーチに直接関係することは書かなかったこのブログでは、新しいジャンルになります。たいしたことは書きませんが、それでも、内容・アイデアともにご利用されるおりには、このブログに一言ご…
ベルリンに来たので、橋本さんの案内で、ナチス時代に精神病患者を抹殺した政策 Aktion T4 の本部があった Tiergartenstrasse の4番地に行く。1939年から41年にかけて、全国の精神病院から精神病などの病気をわずらった人々の情報を集めて、「生きる価値がな…
オーストリア航空でウィーンまで行って、乗り換えてベルリンに着いた。こういう時には飛行機の中で観た映画の記事を書くのだけれども、オーストリア航空の設備があまりに古く、映画を観る気になれなかった。この10年くらいで、機内エンタテインメントの設備…
必要があって、帝政期ロシアの自殺の歴史の研究書を読む。文献は、Morrissey, Susan K., Suicide and the Body Politic in Imperial Russia (Cambridge: Cambridge University Press, 2006). 野心的な概念装置と重厚な実証のクオリティが高い研究書をそろえ…
必要があって、『性風俗史年表』を読む。三冊出ているけれども、昭和戦前のものを眺めてみた。下川耿史『性風俗史年表 明治編 1869-1912』(東京:河出書房新社、2008); 下川耿史『性風俗史年表 大正・昭和[戦前]編 1912-1945』(東京:河出書房新社、2009…
必要があって、昭和戦前期の外交と軍を中心とした内政の書物を読む。文献は、半藤一利『昭和史 戦前編 1926-1945』(東京:平凡社、2004)私が苦手な政治・外交の歴史の書物で、学術的な書物というより、講談風の語り口で、私のような初心者が重要なことを頭に…
新着雑誌のチェック。精神医学史の大御所のスカルが、戦後アメリカの精神医学と社会科学の歴史を書き始めていて、二部構成の論文の第一部が現れたので、喜んで読む。文献は、Scull, Andrew, “The Mental Health Sector and the Social Sciences in Post-Worl…
紀行文を読み始めた。文献は、Chatwin, Bruce, In Patagonia, with an introduction by Nicholas Shakespeare (London: Vintage Classics, 2005).このあいだドイツに行くときに、飛行機の中で中東の紀行文を読んだ。実際に訪れる国や地域の紀行文を読むのが…
必要があって、1321年のフランスで起きたハンセン病患者の虐殺についての論文を読む。ギンズブルクが『闇の歴史』の中で書いていたのと同じ事件である。文献は、Barber, Malcolm, “Lepers, Jews and Moslems: the Plot to Overthrow Christendom in 1321”, H…
明日(7月12日)に予定されておりましたブリギッテ・シュテガー先生のセミナーについて、開催する場所に変更があります。大学の節電のため、当初予定しておりました144Bが閉鎖された状態になりまして、利用できません。12日の13.00に、北館のロビーにお集ま…
7月9日・10日にわたり、科研費報告会を、国立ハンセン病資料館の一室をお借りして開催いたしました。一日目に報告6本、二日目に報告4本で、いずれの報告にも、十分な討論時間を持つことができ、充実した会にすることができたと思います。二点ほど、気が付い…
本郷の弥生美術館で開かれている高畠華宵展に行ってきた。高畠華宵は、1888年に生まれ、1966年に没している画家である。大正から昭和期にかけて、少女雑誌を中心に、少年雑誌・婦人雑誌を中心に数多くの挿絵を描き、ロマンティックさと清々しさを併せ持つ画…
必要があって、今東光の中編小説「稚児」を読む。『今東光代表作選集』の第五巻に収録されている。単行本だとアマゾンの中古では54,000円の値がついている。時代は平安時代、比叡山の美しい稚児の花若が、高僧の蓮秀法師に愛されている。その花若に、内気で…
必要があって、病気の歴史の概説書をチェックする。文献は、Mary Dobson『Disease―人類を襲った30の病魔 』小林力訳(東京:医学書院、2010)。著者の名前も英語表記であり、書物のメインの題も英語という、ちょっとめずらしい日本語の書物である。いま、同…
Susan Burns, "Marketing Health and the Modern Body: Patent Medicine Advertisements in Meiji-Taisho Japan," forthcoming in Hans Thomsen and Jennifer Purtle, eds.., East Asian Visual Culture from the Treaty Ports to World War II (New York: P…
William Newman, Promethean Ambitions より『プロメテウスの野心』における、ホムンクルスを扱った章を読む。中心は、パラケルススとその追随者が、錬金術の究極の目標として人造人間(ホムンクルス)をつくることを掲げた状況の分析である。その時代に先立…
帰りの飛行機は、往復で月が替わるスケジュールだったから、違う映画を観ることができた。こういうとき、なんとなく得をした気分になる。私が観た映画は、超駄作というのか不思議な魅力を持つB級映画というのか、映画館では絶対に観ないような作品だったから…
7月12日13.00より 慶應義塾大学・三田キャンパス144Bにて、ブリギッテ・シュテガー先生(ケンブリッジ大学)によるセミナーがあります。「震災後の避難所でどうやって安心して眠れるか ― 岩手県山田町にて、非日常の中の日常生活に関する聞き取り調査(中間…
科研費 「近現代日本における医療の構造変化と歴史の重層」 第二回報告会プログラム 2011年7月9日・10日 国立ハンセン病資料館(東村山市)•この会はセミクローズドです。ご参加を希望される方は、主催者(鈴木晃仁)までメールいただくか、お知り合いなどに…